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「……しまった」
棚のバスタオルに手を伸ばした時、着替えを用意していないことに気が付く。
理宇の衣類はリビングの隅にまとめて置かせてもらっていた。
髪を軽く拭いたあと、そのタオルを腰に巻き付ける。
自室であれば何も考えず裸で取りにいっただろうが、人の部屋ではさすがにはばかられた。
洗面脱衣所のドアを開けて一歩踏み出した時、気配を感じて振り向いた。
今まさに玄関から廊下へ上がろうとしていた新と視線がかち合う。
「あ……お帰り」
咄嗟にそれだけ呟くが、実際のところ恥ずかしさと混乱でなかばパニックに陥っていた。
どうしよう。新に裸を見られた。
いや、見られている。
ひきつった笑顔を浮かべながら、理宇は内心泣きそうだった。
自分の失態に叫んで、バスルームに逃げ込みたい気持ちを押し込めて、どうにかその場に留まる。
「いやー、思いっきり雨に降られて慌ててバスルーム行ったから着替えなくてさ。ごめんな、こんな格好で」
渇いた笑いを添えて、あっけらかんと告げる。
裸を見られたくらいで動揺していることを知られれば、何か変だと思われてしまうかもしれない。
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