第6話

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「理宇は洗面所にいて。俺が取ってくるから」  新は視線をさっと逸らして、理宇の前を通りすぎる。  リビングへ行って30秒もしないうちに、理宇の着替えを手に戻ってきた。 「ありがと」  差し出された衣服を礼を言って受け取り、洗面脱衣所のドアを閉める。  手早くTシャツとハーフパンツを着込んで、すぐに脱衣所を出た。 「新は濡れなかったのか?」  リビングに入ると、新はソファに座っていた。  薄いブルーの半袖シャツにグレーのパンツ。クールビズスタイルの新の着衣は、見る限り濡れている様子はない。 「会社で傘を借りたから濡れてない。電車下りたらもうほとんど止んでたし」  新は前を向いたままで、理宇を見ようとしない。 「あ、そうなんだ、よかった」  理宇が答えても、視線がこちらを向くことはなかった。そんな新の態度に、不安と焦りが湧いてくる。  裸なんか見せられて、気分を害したのかもしれない。  それとも、自分の部屋を裸で、しかも濡れたまま歩き回られそうになったことに対して怒っているのかもしれない。
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