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「何で、いんの?」
俺はそいつに向かって、というよりは呟くように言葉を発した。
俺にも聞こえるか聞こえないかの声だったのに、そいつにははっきり聞こえたのか、こう返してくる。
「光樹に会いに来た」
そいつ―高宮賢人はあの時と変わらない澄んだ目で俺を見つめる。
賢人は中学の同級生だ。
でも、卒業してからは会うこともなくなった。
「会いに来たって、いきなりだね。なんか用でもあるの?」
「ある、けど…。ちょっとここでは言いづらい」
少し小さくなった声と俯いた顔とで何かやばいことが起きたのかと思う。
「じゃあ、場所変えるか。近くにファミレスあるからそこにしよ」
「うん。ありがとう」
「光希」
「行ってらっしゃーい」
先に約束をしていた光希に一応許可をもらう。
俺の1歩後ろをトコトコと着いてくる賢人はなぜか動きが固かった。
***
ファミレスに着いた俺たちは、案内された席に着き、ドリンクバーとサイドメニューを注文した。
思い思いのドリンクをついで、また席に着く。
が、無言。
すぐにでも「話したいこと」を切り出してくるかと思ったが、そんなこともないっぽい。
下を向き、微動だにしない。
何か、俺から話振った方がいいかな…。
「久しぶり。元気だった?」
「…あ、うん!」
俺の言葉にビクッと体を震わせながらも、笑顔で返してくる。
「最近どう?彼女とかさ。いたじゃん」
そう言うと、わかりやすく目を逸らし、気まずそうに言う。
「えっと、彼女とは別れたんだ。そ、それで!言いたいことがあって…!」
「うん」
少し言葉に力が入り、声が大きくなった。
「お、俺の…」
「お待たせしました〜!ポテトでご「俺のセフレになってくれないか!」……あっ…」
賢人の声がファミレス中に響いた。
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