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初めて
「おはよ」
「お、おはよう」
あの日───賢人とセフレになった日から数日が経った。
今日は2人で会う約束をしている。
ちなみにおはようといっても朝ではない。
昼、1時を過ぎたくらい。
「えっと、どうする?」
緊張した様子で話しかけてくる。
そんな賢人を行きたいとこがあるから、と言って手を引っ張った。
「え、手、繋ぎっぱ!?」
「うん。ダメ?」
「いや、ダメじゃないけど!」
「そ。じゃ、行くよ」
戸惑う賢人を尻目に俺は目的地へと向かう。
少し歩いた先にあるそこは賢人も見覚えがあるようだった。
「ここって」
「俺らが初めて一緒に来た店、だね」
中学の時、大人ぶって入った喫茶店。
なんてことないただの店だけど、記憶に深く残っている。
「行きたいとこってここ?」
「そ。昼、まだでしょ?食べてこうよ」
「うん!」
めちゃくちゃいい笑顔で頷き、俺よりも先に店に入っていく。
俺たちは案内された席に座り、メニューを見る。
「ここのハンバーグがめっちゃ美味しかったんだよな」
「そうそう。賢人、ずっと美味しいって言ってたよね」
「だってマジで美味しかったもん」
俺たちはそのハンバーグを注文した。
俺は食べている間、あの時に戻ったかのような感覚に陥った。
でも、俺たちは今、ただの友達じゃない。
喫茶店を出てすぐに賢人はこう言った。
「あのさ、俺ん家今日親いないから、家来ない?」
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