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「本当ですか!」
「うん。本当だよ」
良かった……。ひとりでもそう思ってくれる人がいて。
「ダンスも初めてにしては十分踊れていたと思うし、空野さんのかじき団デビューはなかなか良かったんじゃないかしら。ただね、私ふたりに言わないといけないことがあるの」
申し訳なさそうに紺野先生が言うから、何を言われるのか心配になってしまう。
「僕と紬ちゃんに?」
「そう。他のみんなは前から知っていることだから」
なんだろう。私は理人さんと顔を見合わせた。
「実はね、かじき団としての活動はこれでおしまいになるの」
「え! そんな」
私は思わず椅子から立ち上がってしまった。
「ごめんなさいね。初めに言わなくて。元々私がみんなの反対を押し切って、かじき団を存続させようとしたのは、また来年と約束したのに、楽しみにしてくれている人達に嘘をつく形になるのが嫌だったからなの。だから、蓮見くんと約束して、一年の猶予をもらっていたというわけなの」
「それで、今日やけにホームの人たちが、ありがとうと言ってくれていたのか……」
そうだったんだ。仕方のないことだと思うのに、私は足元が崩れてしまうような不安を感じてしまう。
「じゃあ、もうかじき団のみんなが集まることはないんですか」
「そうね。かじき団としてはなくなるわね」
落ち込んだ顔を見せたらいけないと思うのに、私はカフェオレのカップを持ったまま、紺野先生の方を見られなくなってしまった。
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