プロローグ

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 体調を崩ししばらく入院していたおばあちゃんが亡くなってしまった後、おばあちゃんの住んでいた家が取り壊されることに決まった。  私は『オズの魔法使』のビデオテープがどうしても欲しいと思ったんだけど、遺品整理に行っていたお母さんに訊いたら、そんなのどこにもなかったと言われてしまった。  きっと色んなものと一緒に捨てられてしまった後だったんだと思う。  最初は寂しくて仕方がなかったけど、だんだんおばあちゃんのことを思い出す時間が減り、私は『オズの魔法使』のビデオテープのこともすっかり忘れてしまっていた。  だけど、最近になってよく思い出すようになった。おばあちゃんの家で見た、ドロシーとあの仲間たちを。  おばあちゃんのビデオテープはもうないし、カカシや木こりやライオンだってどこにもいない。私はもう、あれが映画の中の話だということも知っている。  それでも、虹の彼方の世界を夢見てしまうのは、きっと私がひとりぼっちだからなんだろう。  あんなに近くに感じていたエメラルドの世界は――今とても遠い。
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