3 信じてくれる人がいれば独りじゃない

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「そうです…… 私がやりました。あずさの給食費を盗んだ濡れ衣を田島さんに着せようとしたのです」 「せ、先生…… どうして……」由理香は再びの絶望に突き落とされながらも、何故に親友の母親であり信頼する担任教師が自分を貶めようとするかの理由を考えるのであった。 それよりも疑問に思っており、絶望に突き落とされていたのは実の娘であるあずさだった。 あずさは膝を折り絶望に打ち拉がれる母の肩を掴み揺らし涙で頬を濡らしながら尋ねた。 「どうして! どうしてゆりゆりにあんなことしたの!? 四年生からの親友で、(うち)に遊びに来ても親切にしてくれたじゃない! どうしてよ!」 ちぐさ先生は自分の涙を拭った後にあずさの涙を拭い、憂いを含んだ笑顔を向けた。 「あなたのためよ」 「意味分かんないよ! どうしてあたしのためにゆりゆりを!」 「田島さんがいる限り、あなたはセンターになれない。だからよ」 「え……?」 「ママね、あずさにはずっとチアダンス教えてきた。いつかはママみたいなセンターになって欲しかったの『妖精』の子は『妖精』であってほしかったの。妖精の娘は妖精なんだから当然でしょ?」 「あたし、別にセンターになりたいなんて特に思ってなかった」 「それだから駄目なのよ…… 田島さんは天才よ、ずっとチアやってきたあたしだからわかる。あなたがチア部にいても卒業まで田島さんの引き立て役に過ぎない。そんなの耐えられなかった…… あなたが妖精になれないなんて我慢が出来なかったの」 そこに綾子先生が飛び込んできた。 「大室先生、実力でセンターの座をとれないからと言って、下を蹴落とすのは最低よ。私はあなたがOBだったことも『妖精』と呼ばれていたことも話でしか知りません。そんなあなたがこんな考えに至るなんて…… 悲しすぎます」 更に恩田教育長がその後に続く。 「そうですよ! あなたはこのような方ではない! 生徒でありながら『妖精』である君に憧れていた私を失望させないでくれ!」 あずさ先生は天を仰ぎ見、高笑いを上げた。 「なぁにが妖精よ! バァカバカしい! あたしが当時のセンターに選ばれたのだって! あたしより上手くて可愛い子を蹴落としていただけ! 今回みたいにね!」 これ以上は子供に聞かせていい話ではない。とっさにこう判断した軽楽教頭は強引にちぐさ先生を連れ出した。 「もう今日は自習! 研究授業もこれにて終了! 先生方はこのことを伏せてパニックの防止に努めて下さいッ! 君達も他のクラスの友達にこのことは他言無用!」 教師達がゾロゾロと教室を後にし始めた。教師達の一部はあずさ先生のこれより行われる弾劾職員裁判に参加するのだろうと正多は考えた。だからと言って、あずさ先生には別にどうこうとは思うことはない「too bad(お気の毒)」ぐらいしかかける言葉が見つからない。
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