3 信じてくれる人がいれば独りじゃない

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正多はガキ大将を無視し、雑巾を由理香が持ってきたバケツの中に放り込み、濡らした。それから雑巾を搾るが、正多の力は同年代の男子に比べて弱く、雑巾からは水滴がポタポタと垂れてしまう。 すると、輝人が正多の雑巾を取り上げ、ギューっと力強く搾った。瞬く間に水滴の垂れない雑巾となった。輝人は正多に雑巾を軽く叩きつけるように渡した。 「ちゃんと搾れよ」 「さっくん……?」 「しょーちゃんの話は難しいけど『悪いやつ相手でも同じことするな』ってことだろ?」 「そう、なるね」 正多は由理香と一緒に机を拭き始めた。そんな正多にガキ大将が問いかける。 「おい、さっきエラソーなこと言ってたけどさぁ! お前だって田島の濡れ衣を晴らすとかって大室吊るし上げてたじゃねぇか! それだってお前のさっき言っていた正義感の満足とか言うのからやったことだろ? 俺のやったことと何が違うって言うんだ!」 否定は出来ない。ただ、それを論ずるには小学生同士では人生経験も足りなく埒が明かない。正多は相手にせずにひたすら机を磨き続けるのであった……
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