3 信じてくれる人がいれば独りじゃない

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フェイス・トゥ・フェイス。由理香と舞がこうしてお互いに向かい合うのは二年ぶりなのか、折り合いの付かないお見合い状態となる。暫しの静寂の後、先に口を開いたのは由理香の方だった。 「あの時、庇ってくれてありがとう。嬉しかった」 まずは自分を庇ってくれたお礼である。すると、舞は笑顔を向けた。 「あたし、初めから信じてたよ。ユリちゃんがお金を盗むはずないって」 由理香はそれを聞いて堰を切ったように涙が溢れてきた。あんな最低最悪な状態でも信じてくれた友達がいてくれた嬉し涙と、そんな友達を蔑ろにしてきた後悔の悔し涙が入り交じった涙の雨が降り注いだのである。 「ど、どうしたの? ユリちゃんが泣くとあたしも悲しくなる」 友達を失って、これまで蔑ろにしてきた友達の元へと戻る。都合の良い話かもしれない、虫のいい話かもしれない。それでも、由理香は舞を求めずにはいられなかった。涙を拭い、舞の手を握り立ち上がった。 由理香はその手を二度と放さない、何があろうと信じようと誓う。絶対に、何があろうと。 「久しぶりにクレープ、食べに行こっか。まいまい、抹茶バナナクレープ好きでしょ?」 やっと…… やっと…… 藤原さんじゃなくて、かつてのように親友同士のあだ名で呼んでくれた。舞はそれが嬉しくて堪らずに涙が溢れてくる。由理香はそんな舞に気が付かずに手を引いて一緒に図書室を後にした。
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