4 エピローグ また別のお話に向かって

3/8
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
そして考えついたのが、センターである田島由理香の排除であった。教師の強権を活かせば容易いこと。偶然にも教師達の集まる研究授業が今年は自分の担当であることもちぐさ先生を動かす要因となった。チアリーディング部の顧問である綾子先生も当然参加する、その目の前で由理香を「退部」に至らせるぐらいに貶めてやればいい。由理香の「後」のことは一切考えない悪魔のような計画に身を委ねるのであった……  その悪魔のような計画も「焦り」で付け爪を由理香の手提げバッグの中に落としてしまったことで見破られてしまい、身の破滅に至ってしまった。 ちなみにだが、ちぐさ先生は由理香達とチアリーディングの話になる度に、何も問題のない由理香に対して「肘が曲がっている」「動きのキレが悪い」などと(なじ)り、不安にさせチアリーディングの腕前を落とそうとしたのだが、由理香のような才能あふれる者には通じない。その才能を前にして「娘の実力ではこの子に勝てない」と判断した故に小細工を行っていたのである。小細工が通じないからこそ、このような凶行に出たとも言えるだろう。 と、言った話を、ちぐさ先生は事件後に弾劾裁判も同然の教職員会議で同僚の教師全員の前で告白。 教師達はちぐさ先生を叩きに叩いた。庇おうとした教師達も一斉に手のひら返しを行った。特に軽楽教頭の変わり身は苛烈なものである。 「アメリカのチアリーディング部でも似たような話はあるけど……」 「自分の娘をスターダムにのし上げたいだけの親バカ、いや、バカ親ですな」 「理解不能」 「逆恨みも甚だしい」 「一番可哀想なのは娘さんですな」 「いや、田島さんでしょう。彼女、チア部に退部届け出したそうですよ」 「一つの才能を潰したあなたの罪は重い」 止めが古屋敷校長による 「君に教育者の資格はない」と言う、教師失格の烙印である。 ちぐさ先生は事件の後、教室を出て行って以降、二度と6年1組を訪れていない。 軽楽教頭より「生徒達の前で説明義務がある」と、言われたのだが、その義務を果たさずに逃げるように自主退職をし、遠く離れた県外の実家にて家業を継ぐことになった。 娘のあずさも母の元に着いて行くために転校。由理香に謝罪のメールを送って以降、スマートフォンを解約したのか連絡が取れなくなっている。由理香は「ごめんなさい」がゲシュタルト崩壊を起こしたメールを見て、一条の涙を流したが、悲しさは少ないものだった。 あずさであるが、母のこうした気持ちには一切気がついていない。ただ、センターに対する拘りはあるなと思ってはいたが「自分が元センターだったから、あたしにもなってもらいたいだけだろう」と軽い考えでいた。あずさ本人のセンターに対する拘りはゼロに近いし、由理香がセンターの方が良いとさえ思っていた。子の心親知らずとはよく言ったものである……
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!