4 エピローグ また別のお話に向かって

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 翌日の放課後、由理香がスクールカウンセラー室を訪れると教師達が集まっていた。久保先生は教師達に囲まれてどこか浮かない顔をしていた。 久保先生は由理香に気が付いた。由理香は事情を聞きに入る。 「どうしたんですか?」 「あら、田島さん。カウンセリングの時間? ちょっと今日はお休みしていいかな?」 「どうしました?」 「漫画、なくなっちゃった」 「え?」 由理香はいつも漫画が置かれている本棚を見た。本棚の一部分だけがゴソっと抜けているのである。そこにあった本は超有名医療漫画「黒い男 全25巻」単行本25巻分のスペースが空欄となっていた。 「あ…… あたしまだ14巻までしか読んでなかったのに」 「悲しいわぁ」 「買えば、いいんじゃないですか?」と、由理香は素っ頓狂な発想をしてしまった。 「駄目なのよ、25巻全巻初版本なのよ」 黒い男は累計発行部数が一億部を超える程の名作である。重版数も三桁を超える。 25巻全巻が初版本であれば数十万円で取引される程のプレミア本となっている。 「ああ、なんか貴重なものって聞いてます」 「どこかからか聞きつけてきたコレクターさんから結構いい値段で買うって言われたんだけど、ずっとガラスケースに飾っておくって言うから断っちゃった」 「どうしてです?」 「漫画は読むものよ。美術品みたいに保存するものじゃないわ」 「もしかして、盗まれたんですか?」 「それが、わかんないのよ。あたし、今朝からずっとカウンセリングでここにいたんだけど、知らないうちになくなってて。不思議だわ」 由理香はそれを聞いた瞬間に「名探偵」のいる図書室へと走って向かった。 「名探偵」こと、多潮正多は頬杖を付きながら児童文学を読み耽っていた。由理香は図書室の扉を開けるなりに正多に力強く叫んだ。 「多潮くんッ! 事件だよ! 漫画全巻が煙のようにフッと消えたのッ! 不思議じゃない!? 調べよっ!」 うるさいなぁ…… 正多は児童文学をパタリと閉じ、スッと立ち上がり、由理香に手を引かれてスクールカウンセラー室に向かうのであった…… 正多はこれからもこのように澤北小学校内で起こる不思議な事件に首を突っ込んだり、巻き込まれたりするのだが…… それはまた別の話である。                            おわり
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