万年初級の冒険者。

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最後に、腰に巻き付いている冒険者用ポーチにも手を伸ばし中を確認する……ふむ。 「マスターいつものを……」 「またかいっ? ほんと仕方のない奴だねぇ……時間一杯働いてもらうよ!」 「アイアイサーッ!」 マスターは膨よかで心優しい大人の女性の筈なのだが、時折――狂暴なトロールと化す。 ーーー 「ぬおおおおおおお……!」 「ワンッ! 3番テーブルのお客さんの料理はまだかいっ?」 「もう出来上がるところだ!」 私は現在(いま)、絶賛包丁で野菜を刻んでいる……千切りという代物だ。 包丁もある意味、部類で言えば(やいば)……先まりは、これも冒険者にとって必要な剣捌き、という事になる。 名付けて、高速剣『千切りの舞い』という技を使えそうもなくはない。 だから、この行いも決して無駄ではない――無駄ではないのだ。 バリルの都は本日も大盛況。 ワンは一流の料理人として大成するのも時間の問題であろう。 マスターもワンの腕を見込んで厨房で包丁を握らせているのだから、彼はいつか最高の料理人として王都にでも旅立――って、ちがーう!
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