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Beast Master。
――戦慄、した。
力強くロングソードを握り、蝙蝠猫を打倒しようとしていた心、冒険者として一人前と成り、自身を捨てたグレイグを見返そうとする意。
これが最後のチャンスと意気込み、自らを奮い立たせた熱。
それら全てを投げ出し、逃げ出したくなる状況。
俺はロングソードを放し、地を抉った剣は……俺の心が折れると共に、虚しき音を発しながら倒れた。
「あっ……あぁ……」
終わりだ。
そう思った。
短い、人生だとも思った。
街道のすぐ近くに、こんなモンスターがいるなんて、分かる筈もない……いや、こんなの訊いた事もない。
グルゥゥゥゥゥゥ。
上顎から覗かせる剣歯はロングソードよりも長く、人間の子供ならば簡単に丸飲みしてしまいそうな程の大きな口。
切れ味は名刀にも劣らぬと噂される、強靭な爪に、四肢には大地の加護を授かり如何なる者をも威圧する……先程の地揺れは、コイツの先制攻撃でもあるのだ。
大型種、大鬼猫。
Aランクに指定されている、強力モンスターだ。
俺は、生まれたての小鹿の様に足は震え、恐怖で粗相をしない様にするのがやっとだ……。
あ、いま大鬼猫と目が合った。
いま、ちょっとチビったかも……。
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