Beast Master。

1/11
前へ
/287ページ
次へ

Beast Master。

――戦慄、した。 力強くロングソードを握り、蝙蝠猫を打倒しようとしていた心、冒険者として一人前と成り、自身を捨てたグレイグ(・・・・)を見返そうとする意。 これが最後のチャンスと意気込み、自らを奮い立たせた熱。 それら全てを投げ出し、逃げ出したくなる状況。 俺はロングソードを放し、地を抉った剣は……俺の心が折れると共に、虚しき音を発しながら倒れた。 「あっ……あぁ……」 終わりだ。 そう思った。 短い、人生だとも思った。 街道のすぐ近くに、こんなモンスターがいるなんて、分かる筈もない……いや、こんなの訊いた事もない。 グルゥゥゥゥゥゥ。 上顎から覗かせる剣歯はロングソードよりも長く、人間の子供ならば簡単に丸飲みしてしまいそうな程の大きな口。 切れ味は名刀にも劣らぬと噂される、強靭な爪に、四肢には大地の加護を授かり如何なる者をも威圧する……先程の地揺れは、コイツの先制攻撃でもあるのだ。 大型種、大鬼猫(オーガキャット)。 Aランクに指定されている、強力モンスターだ。 俺は、生まれたての小鹿の様に足は震え、恐怖で粗相をしない様にするのがやっとだ……。 あ、いま大鬼猫(オーガキャット)と目が合った。 いま、ちょっとチビったかも……。
/287ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加