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大鬼猫とは……それ程の相手なのだ。
それが今回は冒険者が一人。
しかもその冒険者は、任務を1度も達成した事がなく、万年初級。
ギルドからの信頼はなく、当然……魔法や魔術は使えない。
そんな初級の冒険者が、高価な巻物を持っている筈もなく……ハハハ、詰んだ。
これは、詰みました。
な?
現実逃避もしたくなる、だろう?
最後くらい……妄想して、夢見て、自分の好きな死に方を選んだって、いいじゃないか。
……でも、おかしいな。
けっこう俺、色々と考えていられてるよな……何でだ?
蝙蝠猫が鳴き叫んで、大鬼猫が目の前に現れて……けっこう時間が経ってる、よな?
なのに、何でまだ俺……無事なんだ?
時が遅く感じてるのか?
走馬灯ってやつ――にしては、過去の回想なんてもの流れなかった。
走馬灯は過去の回想が付き物、と昔から相場は決まっている。
でも、どちらかというと……過去よりも未来の事を話してたよな?
現実逃避、ばかりだけど。
あれ……そうか。
そうだよ、俺は一人じゃない……もう一人この場所に居たじゃないか!
見たこともない服装をした女が、俺の依頼を横取りしようとした奴が、まさかあいつが戦っているのか……?
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