プロローグ。

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「では、こちらで手を洗ってください」 店員さんは彼氏のカミカミには何も言わず、手洗い、消毒を促してからスリッパを出してくれた。 室内は割りと広く、10人程の先客がいた。 「初めて、ですよね?」 「はい。 初めてです」 店員さんは彼氏の失敗をスルーしてくれたのだろうが……逆にそれが彼氏の恥ずか死ぬ状況に拍車をかけた様で、赤面し、モジモジしていらっしゃる。 仕方ない、今度は私が対応してあげよう。 「仲、良いですね」 「えっ……あ、はい……」 店員さんは優しく微笑み、私の顔を覗いてきた。 しかし、困った。 その動作、言葉に……今度は私が困惑してしまったのだ――きっとこの原因は、職場での虐め(・・)が影響しているのだと思う。 いや、それしか考えられない……自業自得とはいえ……未だ私の心深くにあるのだろう。 元々、コミュ障ではあったけども、それにしても酷い対応だ。 「……あ。 では、お好きな場所で寛いでください」 ほら。 私の態度を見て……店員さんはやり辛そうに去ってしまった。
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