でるな。

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 彼女の反応から、僕はなんとなく察した。どうやらしらばっくれているわけでもなく、本当に母も理由を知らないらしいということを。そして、実は彼女も理由が気になっているのではないかということを。 「何かあるんでしょうね、きっと。私だってずっと何でだろーって思ってはいるのよ。でも、おじいちゃんもおばあちゃんも教えてくれないのよね。昔の人が言う風習とかって、何か大きな意味があったりするし……みんなが守ってるルールを破るのも空気を悪くするから従ってるんだけど」  ああでも、と母は首を傾げた。 「私が小学校に入るまでは、このルールなかった気がするのよね。何でかしら」  母の子供の頃に、突然できた謎ルール。これは僕も初耳だった。一体どういうことだろう。僕は疑問に思いつつ、再び自分の部屋に戻ろうとしたのだった。そう。 「おいカズミ、ちょっといいか?」 「んあ?」  僕の二つ上の兄に、声をかけられるまでは。  実は、僕には兄が二人いる。中学生の兄と、さらに年の離れた高校生の兄だ。ちなみに高校生の兄は野球をやっていて、遠くの町の学校に進学したので今は一緒に住んでいない。僕の名前がカズミで、中学生の兄がタツミ、一番上の兄がマサミ。全員〝ミ”の字が共通している。 「お前さ、夕立ルールの謎が知りたいんだろ」  声をかけてきたのは、今一緒に住んでいる真ん中の兄のタツミだ。堅物のマサ兄と違って、タツ兄は僕によく似たワルガキで、小さな頃からいつも一緒に遊んで貰った記憶がある大好きな兄だった。その、普段は明るく元気で軽い印象の強いタツ兄が、今日は随分と険しい顔をしている。僕が“知りたい”と言うと、タツ兄は少し悩んだあとで“そうかよ”と言った。 「知ったら、お前この村が嫌いになるかもしんねーけど、いいのか」  その言葉に、僕はタツ兄がルールの秘密を知っていることに気づいた。怖いものを見るかもしれないというのならまだわかるが、嫌いになるかもしれないっていうのはどういうことなのだろう。クエスチョンマークを飛ばしまくる僕を自分の部屋に招いて、彼は言った。 「俺が小学校六年生の時さ、自由研究でこの村の気象についてやろうとしたんだよな。図書館とかで、この土地独特の天気について調べたり、雨によって起こった災害とか調べようとしたんだけど。……そしたら、先生からストップかかったんだ。夏の雨や洪水について調べるのはやめとけって」 「え、なんで?自由研究として、超真面目な内容じゃん……タツ兄にしては」 「最後の一言は余計だっつの。……で、逆に俺はすごく気になっちまってさあ。自由研究は結局別のネタで出したんだけど……こっそり図書館で調べたんだよ。夏の雨、洪水。そのへんになんかあるんだなと思ってさ。夏の雨、ってところで思い出したのがこの夕立ルールだ。これ絶対関連性あるだろと思って」
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