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「アルベルト、紙が貼ってあるぞ」
1人の男のおでこに1枚のメモが貼り付けられていたので、俺はそれを勢いよく剥がし、読んだ。
「姿を見せるな。とのご命令ですので。
王子、気がつくの遅すぎです。
次回から鍛錬をもっと厳しくします。
あとジェスターとミカエルにも、
クラリスに手を出したら容赦しない。
とお伝え下さい」
俺は自分の魂が抜けたのかと思うくらい、思考が停止し、遠くを眺めた……ああ……悪魔ね……
イタネ、ソウイエバ……
「何があった? 悪魔ってなんのことだよ? そのメモはなんだよ」
ジェスターが矢継ぎ早に質問してきたので、説明するのが面倒くさくなり、メモをヒラリと渡し、ひと言添えた。
「今日の護衛騎士はエドワードだ」
「……ああ……なるほど……ね……悪魔……たしかに」
ジェスターはメモに目を通し、添えたひと言ですべてを理解したらしい。
この人攫い達、余程、怖い目に合ったんだろうな……おまえら、ターゲットが悪すぎだ。
万が一、クラリスを攫うのに成功していたら、間違いなく、お前達の命は吹っ飛ぶ……たぶん、闇取引をしている現場……いや国ごと吹っ飛ぶ。国が1つ滅亡してたぞ。
あの兄弟はそれ位の力はあるからな……
エドワードから連絡を受けていたのか、王宮騎士達が来たので、人攫い達を引き渡した。
SSクラス魔道士誘拐は未遂とはいえ重罪であるゆえ、慎重に連れて行け。と命じ、俺はチラリと男達の泣きじゃくる姿に目をやる。
まぁ、もうあいつらに歯向かう気力は全く無いだろうなぁ。
精神的に疲れた俺達がカフェに戻ると、ミカエルはクラリスにベリーベリーケーキを食べさせてもらっていて……って、はいぃぃぃ!?
「あ~ん」
ぱくっ
「義姉さま、美味しい」
こらっ! なんだよ。その役得!!
「ただいま……何してるんだよ」
「あ、おかえりなさい。先にいただいてました」
「いや、そっちじゃなくて。なんで、クラリスが食べさせてあげてるの?」
ジェスターも不愉快そうにミカエルを睨む。
「カップル限定ケーキなんだから、カップル気分を味わいたいとのことで、かわいい義弟の頼みですし」
「やっぱり義姉さまに食べさせてもらう方が美味しい」
「あら? そういうもの?」
「お前な~~、いい加減にしろっっ」
俺とジェスターがミカエルへの苛立ちが頂点になると、クラリスが屈託のない笑顔で、手つかずのケーキを俺達に差し出す。
「安心してください。お2人のケーキはちゃんと残ってますよ! さぁさぁ、座って2人で食べてください」
ケーキが食べたくて怒ってるんじゃなーーーい。
俺はジェスターと顔を見合わせ、あまりにも的外れなクラリスの言葉にため息をつく。
絶対、俺とジェスターが恋人同士だって誤解してるよな?
そんなクラリスの目の前でこのハートの甘々キラキラケーキ、ジェスターと2人で食べられるかよっ!
本当に勘弁してくれ…………
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