お店になんかいました……やっぱり、お約束ですね

5/6
170人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
「アルベルト、紙が貼ってあるぞ」  1人の男のおでこに1枚のメモが貼り付けられていたので、俺はそれを勢いよく剥がし、読んだ。 「姿を見せるな。とのご命令ですので。  王子、気がつくの遅すぎです。  次回から鍛錬をもっと厳しくします。  あとジェスターとミカエルにも、  クラリスに手を出したら容赦しない。  とお伝え下さい」  俺は自分の魂が抜けたのかと思うくらい、思考が停止し、遠くを眺めた……ああ……悪魔ね……  イタネ、ソウイエバ……   「何があった? 悪魔ってなんのことだよ? そのメモはなんだよ」  ジェスターが矢継ぎ早に質問してきたので、説明するのが面倒くさくなり、メモをヒラリと渡し、ひと言添えた。 「今日の護衛騎士はエドワードだ」 「……ああ……なるほど……ね……悪魔……たしかに」  ジェスターはメモに目を通し、添えたひと言ですべてを理解したらしい。  この人攫(ひとさら)い達、余程、怖い目に合ったんだろうな……おまえら、ターゲットが悪すぎだ。  万が一、クラリスを(さら)うのに成功していたら、間違いなく、お前達の命は吹っ飛ぶ……たぶん、闇取引をしている現場……いや国ごと吹っ飛ぶ。国が1つ滅亡してたぞ。  あの兄弟はそれ位の力はあるからな……  エドワードから連絡を受けていたのか、王宮騎士達が来たので、人攫い達を引き渡した。  SSクラス魔道士誘拐は未遂とはいえ重罪であるゆえ、慎重に連れて行け。と命じ、俺はチラリと男達の泣きじゃくる姿に目をやる。  まぁ、もうあいつらに歯向かう気力は全く無いだろうなぁ。  精神的に疲れた俺達がカフェに戻ると、ミカエルはクラリスにベリーベリーケーキを食べさせてもらっていて……って、はいぃぃぃ!? 「あ~ん」  ぱくっ 「義姉さま、美味しい」  こらっ! なんだよ。その役得!! 「ただいま……何してるんだよ」 「あ、おかえりなさい。先にいただいてました」 「いや、そっちじゃなくて。なんで、クラリスが食べさせてあげてるの?」  ジェスターも不愉快そうにミカエルを睨む。 「カップル限定ケーキなんだから、カップル気分を味わいたいとのことで、かわいい義弟の頼みですし」 「やっぱり義姉さまに食べさせてもらう方が美味しい」 「あら? そういうもの?」 「お前な~~、いい加減にしろっっ」  俺とジェスターがミカエルへの苛立ちが頂点になると、クラリスが屈託のない笑顔で、手つかずのケーキを俺達に差し出す。 「安心してください。お2人のケーキはちゃんと残ってますよ! さぁさぁ、座って2人で食べてください」  ケーキが食べたくて怒ってるんじゃなーーーい。  俺はジェスターと顔を見合わせ、あまりにも的外れなクラリスの言葉にため息をつく。  絶対、俺とジェスターが恋人同士だって誤解してるよな?  そんなクラリスの目の前でこのハートの甘々キラキラケーキ、ジェスターと2人で食べられるかよっ!  本当に勘弁してくれ…………
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!