かさに願いを

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あの少年と会ってから2週間ほど経ち、俺がほぼ毎日のようにバイトに精を出していた頃に、思わぬ形で再会した。 寝起きにテレビを点けると、地元テレビ局の番組であの少年が特集されているのだ。 映像には少年とお地蔵様が映り、そこには多くのビニール傘が飾られていた。傘はどれもビニール傘なのだろうが、非常にカラフルであった。 傘はマジックで放射状に虹色に施され、お地蔵様にそれらが置かれている状況が現代アートのようだと、SNSから火が点き、瞬く間に話題になったらしい。そこで地元テレビ局が現地で掃除をしていた少年に直撃したとのことだ。 そういえば、カラフルな傘をたくさん吊るしたりするだけで写真映えした観光地があるって聞いたことがあったな…… まさか、自分の助言が願いを叶えるヒントになるとは思いもしなかった。 「ハハ、良かったじゃないか!」 まだ少年が画面内で「有名になって嬉しい」とはしゃぎ、インタビュアーの笑いを誘っているなかだったが、バイトの時間が迫っていた俺はテレビを消した。 テレビで少年を見てから、さらに一週間後、俺がバイトをしてると、あの少年が来た。雨も降ってきているからか、以前見た雨合羽を既に着ている。 「お、有名人! その後の調子はどうだ?」 「うん。ひとつねがいがかなったよ。あと、もうひとつおねがいしたいんだ!」 「まだあるのか! 欲張りなやつだな。ほら、持っていきな!」 会計を済ますと、少年はそそくさとビニール傘を一本買って、去って行った。 「よくやるよ、本当に」 俺の皮肉に、同じシフトの女の子が何故か怪訝な顔を浮かべていた。
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