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9 思わぬ再会~王子と町~
王子と私とマカミで歩きます。非常~に気まずいです。何を話せばいいんでしょうか。
マカミは私のそばにいるので、ご機嫌です。トコトコとおしりをふりふり歩きます。まあ、小さいマカミが見れたから、ヨシとしましょう。
どこに連れて行こうかな。
王子の目的はいったいなに? どこに行きたいの? 全く検討がつきません。
「アリス、どうかした?」
王子が微笑みます。
やばい、眩しい……。思わず、手で目を覆います。王子の顔面破壊力、半端ないです。
こんな顔で見つめられたら、女の子はドキドキしちゃうよ。
王子が心配そうに私を見ています。
「いえいえ、大丈夫です」
心をのぞかれたのかもと思って慌てて、返事をします。
「アリスには、きっと予定もあったのでしょう? まずは、アリスの用事を済ませましょうか?」
風の悪戯で乱れた髪を直そうと、王子が前髪をかき上げます。
サラサラの銀色の髪に触りたいという欲求が……。いけない、いけない。王子の方は見ないようにしておこう。
ああ、引力が……。ダメだ、このままでは見てしまう。見てはい・け・な・い。
私は首を硬直させ、前を向いたまま、王子に話しかけます。
イケメンは罪だと思います。
く~、悔しい。
「いえいえ、私の用事は大したことがないのでお気になさらないでください。それよりも王子の行きたいところに行きましょう」
「そうだな……、農業や商工業の資料が見たいな」
王子は低くくぐもった声で私の顔に近づきました。
近い、近い、距離が近い。顔はもっと向こうにやってください。さりげなく距離を取ろうと逃げますが、王子がどんどん近寄ってきます。
もう、わざとですね。この甘々は。あんた、新婚約者いますよね。そういう雰囲気にするなら、カトリーヌ様にやってください。
私はキッと目を見開いて、王子をにらみます。
「では、この町の中枢である農商工会議所がいいですかね。そのあとは……、用事がなければ、町を散策しましょうか」
王子は私を見てフッと笑いました。
私のテンションの低い声で王子は一瞬ひるんだようにも見えましたよ。そんなに簡単に婚約破棄した王子を許すわけにはいきませんからね。
「教会も行きたいんだ。この教区の教会は、テンメル教会主だよね?」
おじいちゃん先生のところに行きたいの?
「教会……ですか」
「うん、アリスはいやかい?」
「いえ、そんなことはないですけれど……」
王都には立派な教会あるよね?
「よかった。そのあとは、アリスは、いろいろ買い物とか、あるんだろう? 荷物を持ってあげるよ」
王子が静かに私の反応をうかがっています。
「いえいえ、そんな畏れ多い……」
バ、バレちゃう。まずいわ。
「今は君と二人きりだし、僕の方が力があるよ」
王子の言葉にぞわぞわっときます。
何だろう、このやさしさ。そして違和感。嫌味と圧迫つき。絶対、探査がばれている! いや、旅?くらいの感じでバレているかも。
王子の狙いはいったい何?
私が後ずさって驚いていたら、王子がクククと笑いました。
「ほんとアリスは面白いねえ」
顔がいいやつは腹黒い。
名言が浮かびます。
ぜったいそうよ。そうに違いない。でもお父さまとフィリップは除くからね。
「すごいエネルギッシュだね……、王都とはまったく違う雰囲気だ」
王子は感嘆しています。
「この町トラウデンは王都の台所であり、貿易拠点でもありますから。いろいろな国の人、物流、文化が集まっております」
「なるほど。人々の顔も生き生きしているね。いい雰囲気だ。統治がうまくいっているんだなあ」
王子はうんうんと勝手に納得しています。
川の方から大きな荷物を運ぶ馬車が何台か見えます。朝とれた魚や野菜などを乗せているみたい。夕方の特売にでるに違いありません。
きょうも町に変わりはございません。私の自慢の町です!
「あのさ、アリスは、もうすぐ旅でる予定じゃないの?」
王子は穏やかに私と向き合います。
ううう。
私は顔から血の気が引くのを感じました。
「旅とか、そ、そんなことないですよ……。 私ならすぐに帰れますし」
ああ、バレたよね。やっちまった感が満載です。
王子は笑っています。
「そうか。やっぱりそうなんだね。ああ、トラウデンの町は、やっぱりいいな……」
王子は小さくつぶやいたのでした。
農商工会議所に到着です。白い石造りの大きな建物になっております。
受付をすますと、商工会議所代表のウルマが出迎えてくれました。
「ウルマ、こちらがアンソニー王子です」
「……、お目にかかれて光栄です」
ウルマは丁寧にお辞儀をします。
「非公式で来ているから、かしこまらずにいてくれ」
王子は微笑んで見せる。
ウルマはようやく顔を上げ、王子にうやうやしく相対します。
「それで……。この農商工会議所に何の御用ですか」
ウルマは警戒しているみたい。いきなり王族が来たんだもんね。
「ああ……」
王子は口ごもります。
ウルマが王子に見えないように手でハートを作って見せます。ウルマの目から「やっぱり王子とラブなのか?」という疑問が読み取れます……。
「ウルマ、ちがうから! 私、本当に婚約破棄されてるから、そういうのないから」
私は思わず大きな声で突っ込んでしまいました。
「えええ!? 」
ウルマもびっくり。
「王が勝手に婚約破棄したようですが、そこはどうなんでしょうねえ。有効なのか無効なのか……。これからですね」
王子は顔色を変えず口角を上げ、説明する。
なんですか、その腹黒い答えは。答えになってませんよ。
さすがのウルマもコメントを差し控えています。
三人で沈黙を囲んで数十秒。マカミ、助けて! と思ってみたら、マカミは床に伏せて目を閉じて知らんぷりです。
「ところで、ウルマ、この町の今年の輸出と輸入はどうなっているか、外国との現在の関係を教えてあげて」
私は努めて明るくウルマに話題を振りました。
ウルマは商売人の顔に戻り、王子に向かって資料を見せながら説明しはじめます。
ウルマのところで商業地域の授業をたっぷり受けた後、私たちは農業部へ向かって歩き出ました。
王子は収穫があったようで嬉しそうです。
「王子、アリスさま、ようこそおいでくださりました。私は代表のサカゴクと申します」
サカゴクが深々と礼をして、両手でハートを作って私にそっと見せた。
だから、ただの元婚約者だから。ちっとも仲良くないからと私は訴えようと首を大きく横に振りますが、サカゴクはあからさまに喜んでいます。
いや、そこ喜ばないで。ねえ、それ、勘違いだから。
「サカゴク、あのね、王子には新しい婚約者であるカトリーヌ様って方がいらっしゃるのよ」
私の顔は引きつる。
「ああ、そうなんですね。それなら、また王子が婚約破棄されればいいじゃないですか」
サカゴクが私に小さい声で囁く。
「いや、そんなに簡単に行かないでしょ」
「結婚じゃないですから、できますよ。結婚すると、離婚は難しいですけどね」
サカゴクが王子に確かめるように顔を見ます。
王子は「そうですね。いまは……、アリスとは大変親しい仲で、いわば大親友ですよ」と言いました。
どの口が言うんだろう。
私は呆れて眉をひそめます。
「農業で特筆すべき点としては、ここ数年ぐんと穀高が増えたことです。国内流通に関してはほぼ横ばいですが、輸出分がその分伸びまして……。農民のやる気がそのまま収入になるようになってきていましたが、最近は困ったことになっております」
王子は唇を一文字にしました。
「サカゴク、ちょっと……」
「お嬢様、止めないでください。一番最初に困るのは弱いものなんです」
サカゴクは硬い表情になります。
「ここ最近、王都から税金や教会税がますます増税され……。ラッセル様や私たち組合がなんとか調整しておりましたが、これ以上のことがあると、市井にも影響し始めそうです。人々の暮らしを守るためにも、王子……、なんとか頑張ってください」
サカゴクの訴えを真摯に聞いていた王子は少しだけ顔を歪ませたが、すぐに笑顔になりました。
「約束する。人々の暮らしが第一だ」
王子はサカゴクの手を握ります。
「王子……、よろしくお願いします」
サカゴクは王子に触れられ、感動しているようです。
その後、農協にある資料や最近の新しい作物など一通り紹介され、王子は満足そうでした。
「あとは、教会だけですね」
「そうだな」
王子は眩しそうに手を額にかざしました。日差しがきょうは強いです。
私が王子のことを仰ぎ見ていると、王子に気づかれて笑われました。笑った顔が可愛く見えたのは気のせいです。
「行こうか、アリス」
王子は大きく息を吸った。
「はい。おじいちゃん先生、テンメル教会主はいつもこの時間礼拝堂にいらっしゃるかと……」
私はマカミを抱きかかえました。
礼拝堂のなかはひんやりしていました。ステンドグラスから太陽の日の光が床に伸びています。
おじいちゃん先生は、誰かと話しています。わたしより10センチくらい高い女性です。歳はわたしより少し年上かな。
海の民の方でしょうか。ベルトにあしらわれた民族柄の刺繍が海の民のものによく似ています。
「おお、アリス」
テンメル教会主はアリスたちに気が付き、声をかけてくれました。私は思わず会釈です。
「ラティファ様、こちらはラッセル公の長女アリス様です」
ラティファ様は青の瞳が印象的で、体から生気があふれ出ています。笑顔がよく似合い、目鼻立ちがはっきりしている女性です。
ラティファはアリスの方を向き、大きな笑顔を見せてくれました。
「わたしのことはラティファと呼んでくださいね」
ぜひピュララティス王国の話が聞きたいわ。
「で、こちらは?」
ラティファ様は王子の方を向きました。そうですよね、気になりますよね。なんていえばいいのかしら。
気まずい雰囲気が漂います。
「こちらは……」
テンメル教会主が口ごもる。そうよね、おじいちゃん先生だって、まさか、この国の王子でアリスの元婚約者とか、婚約破棄されたとか、言えないもの。
「お久しぶりです。テンメル教会主。……アンソニーです」
王子がわざとらしい笑顔で空気をぶち割りました。心臓、強いね、この人。尊敬しますわ。
「おお、大きくなられましたな」
テンメル教会主は朗らかな笑顔を見せた。
「おかげさまで……。きょうは、来客でしたか。しかもラティファとは……」
あれ? 二人は知り合いなの?
「私たち従妹なのよ。ところで、なぜあなたがアリスといるの? アリスって、あなたの元婚約者でしょ」
「まあ、そうとも言いますかね。今は大親友ですよ」
ラティファ様と王子って、微妙な仲なの?
テンメル教会主は苦笑している。
「アリス、男はいっぱいいます。なんだったら、うちの国にいらっしゃいませんか? うちにも兄がいて。あ、独身ですよ。ぜひ紹介したいなあ」
いやあ、これは社交辞令でしょう。あり得ないから、あり得ないから。ピュララティスの王族とかない、ない。たぶん、ない。
「あ、ありがとうございます。知識をひろげるため近々旅にでようと考えているので……、もし、ピュアララティスに立ち寄る機会がありましたら、ラティファのところへご挨拶にまいりますね」
「いいですね、視察旅行ですか。アリスが行くなら僕も同行しましょう」
しれっと王子が応対します。
「おかしいだろ。どうしてお前がアリスと一緒に来るんだよ」
「そりゃ、大親友が僕のいとこのところに行くわけですから」
ラティファと王子が言い合いしてます。
微妙に噛み合ってないようですが、二人が楽しそうなのでよかったです。私の出る幕は……ない感じ。
そういえばさっきいとこって言っていたなぁ。あ、ロイヤルブルーの瞳! 王子の方が濃い、藍色をしていますが、ラティファ様もきれいな明るい青い瞳です。
「テンメル教会主様、きょうは王子の案内に参りましたが、私も久しぶりに会えてよかったです」
私とテンメル教会主はにこりと微笑み合いました。
「町では、王都と教会のひどい圧力が噂になっている。ラッセル侯が食い止めてはいるが、いつまで持つか……とな。私は教会主だが、何も知らないし、聞いてないから……。遠慮なく、アリス、頑張りなさい」
おじいちゃん先生はアリスをやさしく見つめた。
「はい、がんばります」
「力になれることもあるだろう。困ったら連絡しなさい。これでも君の師匠でもあるのだから」
私たちがこそこそと話していたら、あちらのバトルも終わったみたい。
王子は一息ついて、テンメル教会主の方を向きました。
「お元気そうなお顔を拝見できてよかったです。今日、テンメル教会主のところへお伺いした理由は、父ロドニエル王のことです。父の愛人のことはご存知ですか」
「ああ、王子。大きくなられて……。お会いしたのは、10数年前だったか」
「はい。テンメル教会主に遊んでもらったことはよく覚えています」
私とラティファがきょとんとしていると、
「昔、城に上がったことがあって……、その際、王子のお世話を少ししたことがあるんだよ。それに、この町にも何度かお忍びで遊びにいらっしゃってなあ……、おもちゃを買いに視察に来たんだっけ?」
テンメル教会主は懐かしそうに笑みをこぼしました。
「……、昔のことです」
王子はバツが悪そうにしています。
「こんなに立派になられて、さぞかし王も王妃も誇りに思っているだろうよ」
「それならばいいのですが」
王子はため息をつきました。
「その……、ご意見を聞かせていただきたくて……。父の愛人、リリアーヌのことです。副教皇の親戚筋らしいのですが……」
ラティファも黙って聞いています。
王家のプライベートのことだし、私はちょっと席をはずしたほうがいいかもしれませんね。
私はそっと部屋を去ろうとしました。
「アリスもよかったら、聞いてほしい。無関係じゃないんだから……」
王子は悲し気に目を伏せます。
自分のお父さま、お母さまのことだもの、心配よね。でも、私、現在無関係だと思うんだけど……。王子が聞いていてほしいというならば……。一歩後ろに下がったところで、聞くことにしました。
「テンメル教会主、教えてほしいんだが……。父は母と別れ、愛人と一緒になりたいというが……、それは可能なのか」
「そうですね、教義によれば、離婚は無理ですが……。たとえば、王が改宗されるとか、もしくは教典を変える、国教を変更するなどすればできないこともありません。過去には離婚された王もいらっしゃいました」
テンメル教会主は難しい顔をした。
「そうか……。やはりそうなるか」
王子は苦虫を噛み潰したような、渋い顔だ。
「国王様が離婚したいと言われても、教皇様は積極的に教義を変えるなどはされないと思います。我々は宗教家です。人を救うべく立場ですから、教義をたやすく変えることはできません」
テンメル教会主は王子を心配そうに見て、さらに言いづらそうに続けた。
「いずれ……、国王様と教皇様が話し合うことになると思います。ところで、副教皇は政治に大変興味がおありだとか? 教皇様と副教皇様は、お立場が違うようで……、副教皇はいろいろご活躍しているようですね」
テンメル教会主は愁いを帯びた声で王子に確認する。
「……、副教皇か。王家にまで侵入してきているよ。婚約破棄にカトリーヌだ」
王子は皮肉たっぷりに笑いました。
「アンソニー、お前が王になればいいんだよ」
ラティファは腕組みをしました。
「そうはいっても、お二人は親子ですからな、なかなか難しいかもしれないですな。覚悟が必要ですし」
テンメル教会主が労わるように王子を見ます。
「いずれ俺も対決しなくてはいけないときがくるということか」
「……」
テンメル教会主もラティファ様もつらそうな顔をしていました。
しばらくして……、テンメル教会主とラティファと別れ、私と王子は教会を出ました。
まだ青い空が眩しくて、でも、夕闇が近づいているせいか、いくらか涼しい風が出てきて、過ごしやすくなっていました。
「王子、まだお時間ありますか? よかったら、買い物に付き合ってください」
私はわざと明るい声で呼びかけました。
夕方近くなり、商店が立ち並ぶ通りはさらに人が多くなってきました。クレープを食べながら、王子とぶらつきます。王子はクレープが気に入ったみたい。よかったよかった。王子の顔色もよくなったようです。
「先日、教皇様からお呼び出しを受けた際、帰りに王都に立ち寄ったのですが、王都の町には2、3か所ほどしか両替所がないようですね。すごい列ができていました」
「ああ、そうだなあ」
王子はうなずきました。
「でも……、外国の方も王都で増えてましたよね。街にいたのは、観光客とは違い、商人のような姿の外国の方でした。貿易拠点でもないのに不思議でした」
「王都はやはり……、変わってきているんだな。他には何を感じた?」
王子が食いついてきました。
「あとは異国の教会が増えてきたのかなと感じました。建物の様相が違いますからすぐにわかります」
「……」
王子は黙り込んでしまいました。
「あの……」
ちょっと心配になって、正直に話したんだけど……。大丈夫?
「いや、いいんだ。意見をありがとう、アリス。参考になった」
王子は悲しそうな目で、うっすらと笑みを貼り付けています。
マカミは私に抱っこされながら薄目を開けて王子をチラ見しています。腹黒が元気がないと、心配になるよね?
「たすけて!」
女性の声がしました。
私と王子は声のする方向を見て、一緒に駆けだしました。
町娘スタイル、ナイスです。走りやすいですねえ。ドレスだったらこうはいきません。でも……、残念ながら、運動神経はないんですよ、私。
「さ、先に行ってください」
「大丈夫か? 」
私がぜいぜいいっているのをみて、王子は微笑みました。
「わかった、気をつけて……。無理するなよ」
王子には先に行ってもらいました。
王子が間取り角を曲がって、見えなくなりました。私がちょっと立ち止まって息を整えていたら、目の前には男性が5人ほど現れました。
(いやがらせ? なんで私に? 私に対する罠だったの?)
男たちは赤が基調の異国の衣装を着ています。初めて見ました。不思議な感じ……。海の民の衣装とも、うちの国の服装とも違います。後で布地や模様を観察したいですねえ。どこの国だろう……。
(息を切らしているので、もうちょっと待っていただけると嬉しいんだけど)
しかし、お相手はそんなことどうでも良さそうです。
「ちょっとお仕置きを依頼されましてね。お嬢さん」
「痛い目に遭っていただきましょう」
男たちは卑下た笑いを浮かべています。
「……本気で私とやる気ですか」
私の答えに男たちは笑い出しました。
温厚な私でも、ムカってきましたよ。見た目で弱いって判定しましたね。その思い込み、絶対後悔させてやりますからね。
「では、まとめてかかってきてください」
「おまえ、俺たちをバカにしているのか!」
男たちはたいそうご立腹なようです。若い女の子にマウントを取られたんですからね。ぜひ、カーッと頭に血を上らせてください。
「究極魔法、水鉄砲」
私はにっこりと笑うと魔法銃のような形に水を変形させ、連続で男たちに水の弾を打ち込みました。
こんな大きな水鉄砲、見たことなかったのでしょう。文句を言いたそうにしてましたが、面倒なので一気に弾を連射させました。
大きなケガはしないように手加減はしたつもりですが、ごめんなさい。男たちは気絶して倒れてしまいました。
「はあ」
思わずため息が出ちゃうわ。いったいどなたの仕業なんでしょう。お父さまと警備隊に連絡しないと。
町の人たちも集まってきました。
さっさと片付けないとね。
王子も戻ってきました。
「アリス、大丈夫かい? びしょ濡れじゃないか」
「ああ、はい。ちょっと水魔法を使ったので……」
マシンガンスタイルの水鉄砲は、自分も濡れるのが難点です。もう少し武器の構造を学んで、水マシンガンを改良してもいいかもしれません。
「姫様、ほらよ」
見知らぬ男性がタオルを放ってくれました。
「ありがとうございます」
「大丈夫かい?」
八百屋のおばちゃんも駆け付けてくれました。
5人の大男がのされているのを見て、王子は笑い出しました。
「これ、アリス、一人で倒したのかい?」
「まあ、そうですけど」
「君、つよいねえ」
王子はうれしそうです。
「あの……、叫んでいた女の人は? 無事だったんですか」
「ああ、どうやら僕らを引き離したかったようだ。駆け付けたら、誰もいなかったよ」
王子はやれやれという表情です。
この男たちはやはり私の敵ってことになりますか。
私はとりあえず警備隊に花火を打ち上げて知らせ、お父さまには思念波で襲われた旨を報告しました。
家に帰ったら、きっと私は怒られるでしょう。でも、王子が無事でよかったよかった。お母さまにそこだけはほめてもらわないと。ね?
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