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海辺の結婚式
祐一(ゆういち)と朝花(あさか)は、沖縄で結婚式を挙げるつもりだった。
早速式場の下見に行こうと話し、二人は新婚旅行のような気分で沖縄に向かった。
碧色の海に、青い空。白い壁の建物が並ぶ街。故郷とはまったく違う風景に、二人の心は浮き立った。
だがそれも、その日の夕暮れまでのことだった。
夕方、祐一の運転する車の中で、朝花はずっと黙っていた。
祐一も、運転をしてはいるが、どこか落ち着かない様子だった。
そんな二人が今、同時に口を開く。
「ねえ」
「あのさ」
こういうときには、朝花が先に話をすると、二人の間では決まっている。
朝花は改めて祐一に話しかけた。
「結婚式、やっぱり地元のホテルでやらない?」
「ああ。俺もちょうど、そう思ってたところなんだ」
良かった、と内心で朝花は思った。
沖縄の海は美しいが、二人の心の中には、幼い頃から親しんできた地元の海の景色がある。
見知らぬ海を見れば見るほど、地元の海が恋しくなるのだ。
やはり結婚式は、自分たちが生まれ育ったあの街で挙げたい。
二人は目配せして互いの意思を確かめ合うと、帰ったらすぐに地元のホテルに連絡を入れようと約束した。
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