僕が描いた本屋さん

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僕が描いた本屋さん

 孝史(たかし)には、少し変わった夢がある。 「ぼくの将来の夢は、本をたくさん書くことです。そして、何百冊もたくさん書いて、自分の本だけが並んでいる本屋さんを開きたいと思います」  孝史のこの風変わりな作文に、クラス中から笑いが起きた。 「本屋が作れるくらい本を書くなんて無理だ」 「そんなに何百冊も書けるわけない」  しかし担任の先生だけは、孝史の夢を決して笑わなかった。 「皆さんは、レオンハルト・オイラーという人物という知っていますか?」  先生の問いかけに答えられる生徒は誰もいなかった。 「彼は非常にたくさんの本を書きました。あまりにも数が多すぎて、一体何冊書いたのか誰にも分からないほど、たくさん。そんな人が、本当にいたのです。  孝史君も、いつかオイラーのように、数え切れないほどたくさんの本を書くかもしれません。それが百パーセントありえないことだと、今ここで証明できる人はいますか?」  先生の静かな声に、いつの間にか教室の中も静まりかえっていた。  先生はふっと優しい表情になると、穏やかな声で、孝史にこう言った。 「孝史君。そのすてきな夢を、きっと叶えてくださいね」
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