夕立のあと

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 友達に話すと笑われるかもしれないが、私はこの年になっても雷が大の苦手だ。小さい頃から、ずっと。光も、音も、空気も。その全てが恐ろしい。学校にいる時は誰かがいるため、まだ普通に過ごすことができる。問題は、今日のようにたった一人で部屋にいる時だ。  頭まですっぽりと布団をかぶり、視界を覆う。音は聞こえても、これでもう稲妻は見えない。昔の私もこうして雷から自分を隠していた。布団に籠ると、いつもより早い心臓の鼓動がよく聞こえる。  いっそこのまま眠ってしまおうか。そう思っていると、突然スマートフォンから流れていた曲が止まった。それからすぐに聞こえてきたのは、また違った別の曲。電話を知らせる着信音だ。  もしかしたら、父かもしれない。しかし画面を見ると、想像していたものとは別の名前が並んでいた。電話の主は、隣の街に住む幼なじみだ。  幼なじみは、中学まで私の家の隣に住んでいて、それなりに仲良くしていた。時間が合えば一緒に学校へ行っていたし、何なら二家族で旅行にも行ったことだってある。それも、長期休みのたびに何回も。しかし、あいつが家庭の事情で隣町へと引っ越した時から、少し距離が開いていった。物理的な話もあるが、それとは違うまた別の距離も。  あいつが引っ越したのは、丁度中学校の卒業式が終わり、長い長い春休みが始まろうとしている頃だ。高校は同じだったけど、学年が上がるにつれて段々と話さなくなってしまった。理系と文系で別れたのもあるし、そういう時期だったと言われればそれまでだ。まあ、これについては別の事情もあるのだけれど。  連絡だって、お互いの誕生日である八月とお正月に何となくやり取りをするくらいだ。そのついでに世間話を少々。これは今でも続いている。でも、大学だって違うのに。あいつが電話なんて珍しい。
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