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灯をともし来る彼女の瞳。その瞳が、辰巳は怖かった。
温かい灯が彼女の瞳で揺らいで、まるで鏡を見ている気分になる。そしてその鏡は、辰巳自身もを映し出す。彼女がこちらを見れば、辰巳の顔が、辰巳の内側が映し出されているような気がして、覗かれているような気がして、怖かった。
何でも知っていそうなその瞳。ハリーポッターに出てくる「みぞの鏡」のようなその瞳。まだ喋ったこともないし、ちゃんと面と向き合って会ったこともないのに。ただ目と目が合っただけで、一瞬で彼女が恐怖の対象となった。
彼女と出会ったのは真冬の夜。誰もいない静寂に包まれた駅前だった。真夜中、しかも雪が降った夜だったから、普段ならちらほらと何人かいるのに、その日はがらんがらん。だから、すぐに彼女に目が行った。おかっぱで小柄な彼女は、20歳ぐらいだろうか。一人駅前のベンチに座って、何か温かい灯を拝んでいた。
コンビニからの帰り、少し遠回りをしたくなった辰巳は、その日駅前を通った。仕事現場や劇場に行くために、毎日のように通っている場所だが、真夜中には来たことがなかった。真夜中の駅は一体どんな景色なのだろう。気になって、足を運んだのだ。そして彼女と出会った。
遠くから見ていた辰巳は、その光が何なのか最初は分からなかった。でも目を凝らしてよく見たら、マッチ。マッチ売りの少女が売っていた、あのマッチであることに気がついた。
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