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 しかし今回のスランプは違った。辰巳自身もスランプに陥ってしばらくしてから、これは長くなると直感的に思った。脱出方法は未だに見つけていない。脱出の目処も無い。だから少しでも興味を持ったものは、観察するようになっていた。人でも動植物でも、無生物でも。そしてその対象となったのが、彼女だった。  真冬の真夜中に、しかも終電の時間もとっくに過ぎた、街灯も消えてしまっている駅前で、二人。不器用な距離感を持って、ベンチに座りながら時間を過ごした。  ふっと、マッチの火が雪に触れ、火が溶けた。彼女は「あっ」と小さく声を漏らすと、マッチの残骸を空いているスペースに置いて、またマッチを擦る。一回でシュボッという音が鳴り、また明るい火の灯が彼女の前で輝いた。  ——何回やるんだろう。  もうかれこれマッチを眺めながら5分が経っている。寒くないのだろうか。厚着をして出てきた辰巳でも、凍えそうだ。それなのに彼女は寒がる様子もなく、じっと灯を眺めている。
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