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 そして今日も雪が降る中、誰もいない静寂な駅前へと訪れていた。いつものように、彼女はマッチの灯を縋るように眺めていた。 「何でマッチ?」  記憶が途切れ途切れになって、プツンと何かが切れたと思った次の瞬間、辰巳は彼女の前にいた。驚くことなのに、なぜか辰巳はそれを受け入れていた。動じることもなく、彼女が顔を上げるのを待っている。辰巳にとってのなのかもしれない。  彼女は顔を上げると、辰巳に虚無の瞳を見せる。その瞳にごくりと息を呑み、一歩後ずさりそうになった。彼女から重力が出ているように、後ろへと押し倒されそうになる。それでも耐えて、その場に立った。  改めて彼女の瞳を見た瞬間、欠けていたパズルのピースが見事にハマった。それは決してパズルのピース。欠けていることすらも、パズルのピース。 「私に言ってますか?」  辰巳は頷くと、彼女が不審そうに辰巳を見る。 「どうして真冬の真夜中に、しかも誰もいない駅前でマッチ擦ってんの?」  雪が火に触れ、静かに火が消えると、彼女はそれを見てマッチ棒を隣に置く。彼女の隣には、火が消えて使えなくなってしまったマッチ棒が何本も置いてあった。どれも雪のせいで湿っている。 「火の灯に当たりたいからです」 「どうして?」 「どうして? ……少しでも火に当たれば、と思ったからです」
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