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第12話「あの後、みんなはどうなったの?」
「じゃあ、起動するね」
真希がそう言うと、一気に視界に光が戻る。
「どう、解像度30720×17280の視界は」
真希が興味津々に聞いてくる。
「めちゃくちゃキレイだし、ズーム機能とサーモグラフィー、赤外線モードもいい感じ」
私は真希が新しく作った人工眼の機能を色々試してみる。
「今の有紀なら、500m先のアリの足の本数までし数えられるはずだよ」
「うん、バッチリ」
ネルボルスとの戦いで、右手、左足、両目を失ってからおよそ2年ほど。真希が作る人工眼や義手、義足は当時より格段にパワーアップし、見た目も外見だけでは人工とはわからないほどに違和感なく定着した。
「人工眼の他に義手、義足もそうだけど、バッテリーの消耗速度が以前より大きく上がってる。人工肺の吸気効率を1400%まで上げる事で酸素変換充電されるからあまり気にしなくていいけど、万が一人工肺の吸気効率が落ちた場合は、各人工部位の機能に制限をかけることで有紀の生命維持を保つようにできてるよ」
真希がホワイトボードを使って説明した。
「そういえば真希、前に提案したロケットパンチの機能はどうなったの?」
「あれは却下。有紀が普通に生活するだけなのに毎回武器所有の許可申請が必要なのは面倒ったらありゃしない」
「あー、それもそっか」
私は真希が作った右手を眺めながら、掌を開けたり閉じたりしてみた。
「どう?脳内のチップの信号を直接受けるようにしたから、前よりも動かしやすいと思う」
「うん。私の手だ」
右手で真希にピースしてみた。
「いいね」
真希は道具を片付け終わると、自分のデスクチェアに腰掛けた。
「そういえば、また黒い霧の被害者が出たんだよね」
「…そう。今回の被害者は、小林さんっていう女子高生の子だった」
「そう」
私はテーブルの上のココアをすすった。
「あちっ。…その子、黒い霧を浴びてから2日経った今でも意識が戻らないみたい」
「…終わらないな」
私はふとスマホを取り出した。
「そうだ、それで思い出したんだけど。昨日朱梨から連絡があって、今週末に4人でお出かけしようって言われてたんだった」
「お、いいじゃん。どこ行くの?」
「朱梨が温泉行きたいっていうから、ア・タムとかどうかなって。」
「ア・タムかぁ。海鮮丼とかも食べたいね」
「じゃあ、行くって言っておくね」
「お願い。車は?」
「車、納車したんだって」
「ほお、セバルのレゴシーだっけ?楽しみね」
「まだ初心者マークだけど、皆を乗せてくれるって言ってたから」
私は朱梨に返信を送った。
「じゃ、明日からまた頑張りますか」
「だね。おやすみ、有紀」
「おやすみ〜」
私は自分の部屋に戻り、電気を消した。
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