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「おはようございまーす」
私は事務所の扉を開きながら声を出した。
「おはよう、有紀ちゃん」
「おはよう朱梨、今日も早いね」
あれから結局、朱梨は今でも災害級生物対策課の非常勤職員として働いている。
「おはようございます、宮田さん」
「おっす、島岡くん」
島岡くんは、少しだけ役職が上がったらしい。何もしてなかったクセに。
「おはよう、宮田!」
「おはようございます、課長」
上原課長は、多分退職までずっと課長止まりなんだろうな。
「……あれ、もう一人の姿が見当たらないけど?」
「おう。あいつは早出で既に現場に向かってる。今日は『【毒の大鯢】アオダツミ』の調査だ」
アオダツミ。古くから存在が認知されている災害級生物で、有毒の粘液を出す能力を持つ。毒性の拡散力が高く、周囲の環境を変えてしまうことがある為災害級生物と認定されたが、災害級生物という概念が生まれる前までは厄犬という名で知られていた。
犬の様に高い鼻、長い耳を持っているのでこの名がついたとされるが、元となる生物はミズサンショウウオという水性動物だ。一部の止水域にしか生息しないが、アオダツミは環境適応能力が高く、陸を徒歩で移動して湖まで辿り着くとされる。
「あ、その事なんですが」
島岡くんが割って入った。
「先ほど彼女より連絡がありました。ぜひ宮田さんに現地に来てほしいと」
言いながら、島岡くんは私に、私の愛車である「Riser600」の鍵を渡した。
「きっと宮田さんも喜ぶ、だそうです」
「わかった」
「既に速度超過申請も済んでいます」
速度超過申請を警察に予め出す事で、私のRiserは緊急車両扱いとする事ができる。
「じゃ、行ってきます」
私は駐輪場へ向かった。
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