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食べようと席に座ると、同じようにレントも椅子に座ってピピンを食べ始める。果汁がたっぷりの実からは汁が滴り落ちて手をベトベトにするはずだが、器用にチカラを使って汁が落ちる前に消し去っていた。
妖精族という、魔力に長けた種族だからこそ為せる業だろう。
ぼーっとその様子を見ていたために、レントから不信の目を向けられた。
「なんか言いたいことでもあんのか?」
ぶっきらぼうだが、冷たい話し方ではない。リノアは思ったままを口にした。
「チカラだけじゃなくて、武器の使い方までこなしていてすごいなって思っただけ。私はどちらも初心者レベルだし……」
スッと細められた目に危険を感じて額を手で覆った。
瞬間、チッと舌打ちされる。
「下らないこと言ってんな。言っただろ、俺は物心つく頃から武器もチカラも訓練してきた。最近始めたお前と同レベルなわけねえだろ」
それはそうなんだけど……と呟く。
「俺たち妖精族でさえ、チカラを使いこなせるように何年もかかる。焦る気持ちも分かるが、ゆっくりでも着実に身にすることが大事なんじゃないのか」
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