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ここで立ち止まっていても仕方ない。とりあえず森の中に入ろうと足を進めた。
騎士団からは、我々はあまり深い所に入らないように言いつけられている。この森の奥深くには、今の護衛団では敵わないような魔獣が住んでいるのだそうだ。
さすがのリノアも遠くの気配まで読めるほどまだ洗練されていないが、それが大きな力を持つものだと感じ取ることもある。
距離までは測れないが、確かにこの森の中からは何か大きな力を感じて、リノアの肌は粟立っていた。
腕をさするリノアの様子を見て、ファイが声をかけてくる。
「どうした?寒いのか?」
対抗心バチバチの割に普通に話しかけてくる。
このようなタイプの人族と出会ったことがないリノアは、どういった態度をとるのが正解か分からない。
「……別に寒いわけじゃない。ただ、騎士団が言っていた、強い魔獣の気配が漂っていて警戒しているだけ」
結局ぶっきらぼうに、でも聞かれたことには素直に答えてしまった。
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