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付近に目を見渡しながらそんなことを考えていると、ものすごいスピードでこちらに向かってくる気配を感じた。
足を止め、険しい目つきで森の奥を見つめるリノアに気付いた3人も声と気配を押し殺して構えている。
ルースコンテ騒動の際に、街の護衛を任された時の護衛団員とは違うようで安心した。
だがその安心はすぐに焦りへと変わる。
「数が多い……!」
リノアが感じ取った気配は少なくとも10はいる。どうやら群れのようだ。
しかもとてつもなく足が速い。すぐに姿を見せるだろう。こちらに敵意がないことを祈りたいが、そんなことは楽観的過ぎる。現に、群れは寸分違わずこちらへ向かってきていた。
カサカサっと遠くの葉が揺れる音がした。
同時にゲゼルが弓をギリと引く。
暗闇から光る眼が見えたと思ったと同時に、パァンと矢が放たれた。
オォーンと吠えた魔獣は、ひらりと矢を躱してリノアたち5人を瞬く間に囲む。
「フルースト……」
別名、森狼。フルーヘル、フルーダと同じくフルー族と呼ばれる狼型の魔獣である。
リノアは舌打ちしそうになった。
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