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―――では、新郎新婦の御入場です。皆様、拍手にてお出迎え下さい
進行役の司会者の声に、一斉に祝福の声と拍手が沸き立つ。
主役の二人は腕を組み、幸せそうな笑顔を浮かべながら、ゆっくりと一歩ずつ踏み出す。
私はそんな二人を、どんな顔で見つめていたのだろう。
多分、祝福ムードではない私の表情は、他の招待客の中では浮いていたに違いない。
「……高梨さんのお腹、あんまり目立たないよね」
「……そうね」
「それにしても、臨月近いっていうのに、この時期に披露宴するってどうなわけ?」
「自分は幸せだって、周りに見せびらかしたいだけでしょ」
隣に座る、友人の亜沙美の言葉に、私は可愛げのない言葉と共に、適当に相槌を打つ。
すると今度は周囲を気にしながら、私の耳元に顔を近づけ、彼女がそっと囁く。
「凛子、眉間に皺が寄ってる」
「……皺くらい寄らせなきゃ、やってられないよ」
「そりゃそうだ」
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