12.兆し

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. 「そんな怖い顔しなくても、中学生くらいの時の話ですから安心してください」 俺の胸騒ぎは、完全に見透かされていた。 そうだよな。 碧生君は今、あさみんという彼女がいるのだから、凛子に特別な感情を抱いているはずがない。 彼はとても誠実な人間だ。 「すまない。ここにきて、まさかのライバル登場のシナリオを想像してしまった」 正直にそう話すと、碧生君は失笑した。 そして、どうして急にそんなことを暴露したのか、その真相を語り始めてくれる。 「俺、昔から人付き合いとか苦手だから友達もロクにいなくて、クラスでは浮いた存在だったんです。 いじめられていたってわけじゃないけれど、遠巻きにはされていて、俺に近づいたら自分までハブられるんじゃないかって、近づこうとする奴なんて一人もいなかった」 「それは、分からなくもないな……」 俺も人付き合いが得意なわけではなくて、しかもこの目つきの悪さが相まって、一部の同級生には何故かビビられていた。 そんな俺を怖がらずに、唯一歩み寄ってくれたのが茜だった。 「でも、凛子だけは違ったんです。幼馴染っていう情もあったのかもしれない。学校の中で顔を合わせると、いつも明るく声を掛けてくれた」 碧生君にとっての凛子は、俺にとっての茜なのかもしれない。 それならば、彼が凛子に想いを寄せるのは自然の摂理なのだろう。 .
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