12.兆し

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. 「周りの目を凄く気にするくせに、自分にとって大切なことは頑固なくらいに絶対譲らない。そんな凛子の強さに、俺は救われたんだと思います」 「そうか……」 「今は、凛子に対して恋愛感情はありません。俺が好きなのは、あーちゃんだけだと誓って言えます。 でも、凛子は家族のように大切な存在だから、悲しんでいる姿を見たくないんです」 俺も、茜を悲しませたくなかった。 だから、留以のことは放っておけなかったし、幸せを見届けたかった。 でも、その幸せを共に担っていくのは俺の役目ではない。 俺がこの手で幸せにしたい相手は、一人しかいないのだから。 「凛子はまだ、芹澤さんのことが好きです。芹澤さんも同じ気持ちでいるなら、凛子のことを絶対に見捨てないでやって下さい」 その言葉は、碧生君の生真面目な人柄を象徴している。 見捨てるはずなんてない。 むしろ、俺が捨てられる可能性の方が高いのに。 しかし、そんな不安を吐露するよりは、今の正直な想いを語りたいと思った。 凛子と同じ、芯の通った揺るぎない目をしている彼に。 「……俺は過去に、愛していた人を病気で亡くしたことがある」 次は、俺の過去を暴露する順番だ。 不幸自慢をするつもりではなくて、俺にとって凛子がどれだけ大切な存在なのかを誇示したかった。 あさみんなら、ここで大騒ぎしただろうが、碧生君は特にこれといった反応は見せずに、黙って耳を傾けてくれる。 そのお陰で、話の腰を折らずに続きを語ることができた。 .
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