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「周りの目を凄く気にするくせに、自分にとって大切なことは頑固なくらいに絶対譲らない。そんな凛子の強さに、俺は救われたんだと思います」
「そうか……」
「今は、凛子に対して恋愛感情はありません。俺が好きなのは、あーちゃんだけだと誓って言えます。
でも、凛子は家族のように大切な存在だから、悲しんでいる姿を見たくないんです」
俺も、茜を悲しませたくなかった。
だから、留以のことは放っておけなかったし、幸せを見届けたかった。
でも、その幸せを共に担っていくのは俺の役目ではない。
俺がこの手で幸せにしたい相手は、一人しかいないのだから。
「凛子はまだ、芹澤さんのことが好きです。芹澤さんも同じ気持ちでいるなら、凛子のことを絶対に見捨てないでやって下さい」
その言葉は、碧生君の生真面目な人柄を象徴している。
見捨てるはずなんてない。
むしろ、俺が捨てられる可能性の方が高いのに。
しかし、そんな不安を吐露するよりは、今の正直な想いを語りたいと思った。
凛子と同じ、芯の通った揺るぎない目をしている彼に。
「……俺は過去に、愛していた人を病気で亡くしたことがある」
次は、俺の過去を暴露する順番だ。
不幸自慢をするつもりではなくて、俺にとって凛子がどれだけ大切な存在なのかを誇示したかった。
あさみんなら、ここで大騒ぎしただろうが、碧生君は特にこれといった反応は見せずに、黙って耳を傾けてくれる。
そのお陰で、話の腰を折らずに続きを語ることができた。
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