17131人が本棚に入れています
本棚に追加
***
体調不良で倒れたその日は、午後から半休扱いにしてもらった。
その後も立ち眩みが続いたので、眩暈が無くなるまで医務室で休んでいたら、結局は夕方近くまで会社にいてしまった。
医務さんに御礼を告げて、2階に荷物を取りに戻ったときには、すでに副島さんの姿しかなかった。
真剣な面持ちでパソコンを眺めていて、私が戻って来たことに気づかない彼に、遠慮がちに声を掛けてみる。
「お疲れ様です……」
すると、彼がその手を止めて顔を上げてくれる。
途端にその表情は、私が普段よく目にする明るいものへと変わった。
「あ、おかえり。具合、少しはマシになった?」
「……はい。それで、業務の方はどうなりましたか……?」
それだけが、医務室にいる間も気になっていた。
しかし、彼は明るい表情を崩さないまま、答えてくれる。
「今日が納期のものは、永田さんが仕上げて提出しておいてくれたよ。今、他のスケジュールを見直しているところ」
「お手数をお掛けして、申し訳ないです」
「いいって。スケジュール調整も、俺の仕事なんだから。あ、新しいケースに入れた社員証、レターケースの中に入れてあるから」
そう言って、そこだよと言わんばかりに、私のデスクにあるレターケースへ目線を向けてくれる。
そうだ、社員証のことなんて、すっかり忘れていた……。
.
最初のコメントを投稿しよう!