12.兆し

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. 翌日には快調とまではいかなくても、業務に支障のない程度には復調したので、いつもと同じように出社した。 人事部に足を踏み入れた私が、最初にすべきことは何かは分かっている。 朝の挨拶も程々に、その場に居合わせた小林さんと永田さん、そして中谷さんの3人に向かって頭を下げた。 「昨日は、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!!」 その謝罪に対して、3人がどんな反応を示したのか、頭を下げていたから見えなくて分からなかった。 けれども、まずは小林さんが戸惑うような声色で話しかけてきてくれる。 「いや、取り敢えず……頭を上げてよ」 「……」 言われた通りに頭を上げてみせると、3人は決まりが悪そうに目配せをしてる。 そして、全員の想いを代弁するかのように、小林さんが申し訳なさそうに私に告げてきた。 「俺らこそ櫻井さんに任せっきりで、本当に悪かったって反省している」 「へ……?」 「慣れてきたとは言っても、異動してまだ2ヶ月も経っていない櫻井さんのこと、本来なら俺たちがフォローしないといけない立場なのに、力になれなくてごめん」 その言葉に永田さんも同調するけれど、私の管理能力の甘さが原因で迷惑をかけてしまったのだから、そんな風に思って欲しくない。 必死に何度も謝ってくる二人をなだめていると、この空気を一刀両断するように、中谷さんが口を開いた。 .
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