12.兆し

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. 「そうだ、美味しそうなサンドウィッチの新店見つけたんだ。今日のお昼に皆で一緒に買いに行こうよ」 小林さんと永田さんは、二人とも食べ歩きが好きという共通の趣味も相まって、昼休みは頻繁に出歩いて隠れた名店を探しに行っている。 私も何度か一緒に連れて行ってもらったことがあるけれど、中谷さんはいつも一人でどこかへ行ってしまうことが多い。 もしかしたら田辺部長に会いに行っているのかもしれないけれど、実はただ単純に、他人と群れるのが苦手なタイプなのかもしれない。 「いえ、私は……」 「ご迷惑でなければ……中谷さんも、行きましょうよ」 「……」 「中谷さんが来て下さったら、私も嬉しいです」 永田さんの誘いに乗ろうとしない彼女を、今日は何故だか一人にさせたくなくて、私も率先して声を掛けてみる。 すると、少し悩む素振りを見せたのち、漸く首を縦に振ってくれた。 「分かりました……。じゃあ、今日はご一緒させていただきます」 その言葉に、私たち3人は子供のように歓喜の声を上げた。 それから、副島さんが改めて組み直してくれた無理のないスケジュールと、人事部内のとてもいい雰囲気のお陰で、午前中は病み上がりとは思えないほどに集中して業務を行うことができた。 .
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