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副島さんに連れてこられたのは、楢崎常務の部屋だった。
2回ノックして中から応答があると、彼はそっと扉を開いた。
失礼しますと一礼をしながら中に入ったので、私もその後を追って同じように挨拶をしてから中へと入った。
顔を上げると、そこには関川部長と楢崎常務、そして他に予想外の人物が二人いた。
そのうちの一人である営業部の田辺部長が、私を気遣うように声を掛けてくる。
「忙しいところ、すまないね」
「いえ、あの……」
「至急確認したいことがあって、副島君に君を連れてきてもらったんだ」
そして、田辺部長の横には柊平さんの姿があって、かつてよく目にしていた冷徹無情な仕事モードの顔つきをしている。
顔を合わせるのはエレベーターの一件以来だけれど、こんな形で会いたくなかった。
今は、何が起きているのか理解できないこの状況を、一秒でも早く把握しなければいけないのに……。
するとその時、田辺部長の口からとんでもない事実を告げられた。
「実は昨日、営業部のクライアントの取引情報が数件、他社競合に漏洩するという問題が起きた」
「え……!?」
「その情報開示に、どうやら櫻井さんの社員IDが使用されていたんだ」
「……」
私の社員IDが……?
勿論、私は営業部の情報を漏洩させた覚えなどないし、そんなことをするはずもない。
情報漏洩は立派な規律違反で、許されるべき行為ではないことくらい、当然に理解している。
だからこそ、その言葉を鵜呑みにすることなどできない。
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