01.ファースト・ナイト

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. 敢えて誇張するように返事する。 その言葉に嘘はないけれど、彼の幸せそうな顔を見ると、無意識のうちに唇を噛みしめている。 「じゃあ、そのブレスレットをしていることに意味はないと?」 「物に罪はないでしょ。それにブルガリだし……」 私が手首に巻いているブルガリのブレスレットは、以前に彼が買ってくれたものだ。 多分、付き合い始めて1年の記念日だったと思う。 私がまだ、彼に愛されていたころの話。 「私だったら、浮気された時点で手切れ金代わりに即換金だけど」 「……だって、気に入っているから。それに自分じゃ高くて買えないし」 今日という吉日に、敢えてこれを付けてきたのは、当てつけでもなければ未練なんかでもない。 手放すには惜しい、ブランドの価値の問題だ。 この心に、あの人への想いは残っていない。 裏切られていることを知り、彼女が妊娠していると聞かされた時、私は彼と過ごした4年間を否定されたようで傷ついた。 積み重ねたものが、呆気なく崩れ去っていく瞬間を、目の当たりにした。 「凛子、合コン開いてあげようか?」 「……遠慮しておく」 実際に、今までに何度か、亜沙美は私のために合コンを開いてくれたけれど、よく知らない相手と無理に会話を弾ませながら、楽しい振りをして食事をすることが苦痛でしかなかった。 私には、あの手の出会いの場は向いていない。 .
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