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「どうして?浮気相手を妊娠させるような元カレなんて忘れて、新しい出会いを求めなよ」
「いいの。私には仕事があるし」
「強がりのつもり?」
「本音よ。私だけを大切にしてくれるスパダリでも現れたら、考えてみてもいいけど」
そんな相手は存在しないと分かっていて、強気に言い切ってみせる。
私の言葉に、亜沙美は鋭い目で他のテーブルを見渡し始めた。
どうやら、この会場でスパダリ候補を探しているようだ。
結婚式の披露宴というのは、新しい出会いを探すにはうってつけの場所かもしれない。
しかし残念なことに、ここにいる半数は知った顔な上、今日の主役の元カノである私に手を出そうとする強者などいるはずもない。
「……営業二課の宮本君は?」
「鼻につく話し方が苦手」
「総務部の石井さんは?」
「軽薄そう。浮気されるのはもう勘弁よ」
そもそも、社内恋愛はもうこりごり。
別れた後にしばらく続いた、居心地の悪い日々が軽いトラウマになっている。
それなのに、亜沙美は目についた独身の男性社員の名前を、片っ端から挙げていく。
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