9.シンクロニシティ

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〜XYZ〜 「七海…おまえサツに追われてるのか?」 無言は、肯定と判断した今井。 七海が、向かい合った今井を手招きする。 耳を寄せる今井。 「…店長、…あれ…やりたい」 あの体感型シューティングゲームを指さす。 「大丈夫か…?」 1年前の事が、今井の頭をよぎる。 ゆっくりうなずく七海。 かつての笑顔はなく無表情のまま。 (これがあの七海か?) 明らかに数日前とは異質なモノを感じた。 が、両親を失ったショックと理解した今井。 「いいよ、好きなだけやりな、少し出てくる」 七海が今井を見る。 (なんて目ぇしてやがる) 「心配すんな、着替えと食いもんを買って来るだけだ。それから…あれだ、行くとこなきゃ、今夜も泊まってけ」 そう言って、ゲームのパスキーを渡した。 〜捜査本部〜 15:30 集まった人数は、主だった10人ほど。 「そんな顔をするな。他の者は、七海の捜索中だ。居場所でも見つけたか?今更なんの会議だ」 苛立ちを隠さない三上。 富士本の招集のため、仕方なく従ったもの。 「昴!」気にも留めず咲が促す。 モニターにあの部屋が映る。 「な…何だこれは?」 「笹原の自宅の地下に隠し部屋があったのよ。複数の血痕もあることから、やっぱり妻の千佳は、DVにあっていたと考えて間違いないわ」 三上が、自宅担当班を睨む。 「それが分かったとして、二人共死んだ今、どうなるものでもないだろう」 「確かにね。でもね、私達はこの後、信雄の前の自宅も調べたの。事故物件の風評からか、まだ空き家だったから楽だったわ。そしてこれ」 昴が次の写真を映す。 「まさか…」 同じ様な赤い部屋であった。 そこで、咲が三上に向いた。 その瞳は真剣そのものである。 「三上さん。あなたは気付いていたはず」 「な!…なんのことだ?」 三上が咄嗟に眼鏡に手をやり、聞き返す。 「今回の事件で謎だった、千佳のジム通いは、夫から身を守るため、で間違い無し」 「あっ…そう言えば、信雄も時々顔や腕などに傷やアザがあり、チンピラと喧嘩したとか、転んだとか言い訳してましたが、部下達は夫婦喧嘩だと思っていた、と話してました」 会社の捜査担当が告げる。 「千佳が無抵抗となった信雄を刺したのも、DVの恨みと考えれば、納得できるわ」 その写真が映る。 今回の異常さが、再び甦る。 「でもまだ分かってないことがあるのよね」 昴が別の二枚の写真を映す。 「一つは、なぜ七海が血だらけだったか?、もう一つは、なぜ草彅慎吾が死んだか?、それから、どうして七海が拳銃を持って逃げたか?」 少しの沈黙。 「し…慎吾の死は、関係はないだろう」 たまりかねて三上が言う。 「あの場所で、同じ事故で死んだのよ?」 「シンクロニシティ…」 ゆっくりした口調で、昴が呟やいた。
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