10.命運

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10.命運

夏の天気は変わりやすい。 署を出た時はポツリポツリだった雨。 現場に着いた頃には激しい雷雨となっていた。 「警視庁の富士本だ」 「し、失礼しました。どうぞこちらへ」 手帳を見た警察官が、慌てて敬礼する。 「はぁ〜、全く」 一瞬、後ろの咲を見てため息をつく。 「被害者は?」 分かりつつ無視する咲。 「えっ…あ、はい。確認できてませんが、まだ子供の様です」 (まさか⁉️) 「銃声がしたとの通報があり、着いた時には暴行を受けた状態で、ゴミ捨て場に。今救急車が到着したばかりです」 豪雨のせいで遅れた救急車に、被害者を乗せるところであった。 「待って!」 傘を捨てて走り寄る咲。 後に二人が続く。 「ちょっと君、なにを…」 ストレッチャーの上の被害者を見る。 「違った…」 「邪魔しないでください!」 救急隊員に引き離される。 富士本が手帳を見せて、容体を確認する。 救急車が去って行く。 「酷くやられてるが、命に別状はない様だ」 「しかし、パチンコに負けたぐらいで、河内組に撃ちますかね、中学生が?」 「昴、なぜ中学生って?」 「これを暴行を加えたヤツが持ってました」 昴が財布を開き、中から学生証を出す。 「倉田剛…」 「目には目をってやつか、流石に殺しはしなかったか」 「富士本さん、でも草彅慎吾は、殺されましたよ、しかもあんな酷い状態で」 確かに、咲もそう思った。 (もしかして…) 「慎吾を殺すつもりは無かったのかも…」 「えっ?」 「バスから、七海に気付いた彼は…」 慎吾の真理を考える。 「早退した彼女を心配してた彼は、バスの窓を開けて、身を乗り出して手を振った…」 「恋人なら、やりそうなことですね」 「そこへ、豊山のトラックがぶつかってきて…か。なるほど、あれは不運な事故…か」 咲の携帯が鳴る。 三上からであった。 「分かりました。こちらの被害者は、倉田剛。一応…無事です。拳銃も押収しました」 「三上か?とうとうお前を認めたようだな」 「伊藤沙織は、無事に家にいるそうです」 河内組の事務所には、一人しかおらず、駆けつけた警察官により逮捕されていた。
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