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どちらかというとにぎやかだった港町にくらべて、引っ越してきたこの町は「静かな浜辺」という印象が強い。ここも海沿いの町で、家の近くに砂浜が広がっているのだけれど、人が歩いているのをあまり見たことがない。かといって立ち入り禁止でもないようなので、今日はこうして散歩に来たというわけだ。人の声は聞こえない。ただただ波が打ち寄せる音に耳をすませながら、落ち着いた雰囲気の海もいいな、としみじみ感じ入った。
浜辺を歩いていると、様々な漂着物が目に入った。ポリ袋やペットボトルといったゴミもあるが、心惹かれるものも少なからず見つけた。色とりどりのシーグラスに、紐が括り付けられたガラスの浮き玉。手のひらに収まるくらいの、扇を広げたような形をした貝殻もある。港町にいた頃は、そもそもこういう砂浜が無かったこともあり、こんなふうに歩きながら漂着物を楽しむことはあまりなかった。実際にやってみると、意外と楽しい。
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