乙姫の鏡

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 転校してから初めての夏休み。わたしは海が恋しくなり、浜辺を歩いていた。  わたしがこの町に転校してきたのは今年の四月。二年生の春ともなれば、すでに固定の仲良しグループができている時期だ。そんな中に見ず知らずの自分が馴染めるか、最初は不安だった。しかし幸いなことに、わたしから話しかけると、みんな話を聞いてくれたし、わたしに興味を持って話しかけてくれる人も多かった。だから自分の中にあった「よそ者」の感覚はだんだん薄れていった。  それでも、最初の学期が終わるまでに一度も関わることがなかった人もいる。ちょっとさびしいな、と思ったところで夏休みに入ってしまった。今は休みで学校に行かないから、誰とも会わない毎日をすごしているから、余計にさびしいと思ってしまうのかもしれない。  こんな気分の時は、決まって海に行くのが習慣になっていた。転校してくる前は港町に住んでいて、家の目の前に海があった。堤防に沿って歩きながら青い海を眺めていると、不安も悩みも広い海にすうっと溶けていくような感じがして、心が軽くなったものだ。  海辺で働く漁師のおじちゃんや、お手伝いのおばちゃんたちと話をするのもいい気分転換になった。特におばちゃんたちが集まって、まるで女子学生のようにおしゃべりしていたのをよく覚えている。そこに混ぜてもらって、学校の行事の話をしたり、港町の昔の話を聞いたりするのが楽しかった。
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