お天気アプリ

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お天気アプリ

 スマホ社会となったご時世。アプリストアを見ると、それはそれは胡散臭いアプリというのもちらほら見かけるものである。どこかのゲームからそのまま盗用してきたようなイラストをくっつけたちゃちなゲームアプリから、運動しなくても簡単にダイエットできるアプリだとか、お金がいくらでも湧いて出るようになる幸運アプリだのなんだの。  中には本当に効果があるものもあるのかもしれないが、そのほとんどが良くて盗作、悪くて詐欺といったところだろうと思う。というか、実際にインストールしただけで個人情報を抜かれることもあったりなかったりするらしい。むしろ、楽しそうなゲームと見せかけて実は、ということもあるそうだ。頼むからそのへんは、もっとアプリストアの審査を厳しくして対応してほしいものだ、と小学生ながら常々思っていたところである。――容量の小さい、安価な子供向けケータイしか与えられてない人間だから余計にだ。  なんせ、容量が少ない=DLするアプリも厳選しなければならないということである。ただでさえ、お店の割引やらなんやらもみんなアプリ頼りの世の中だ。使えるかどうかも分からないものを落として、容量を圧迫させる余裕など微塵もないのである。  ゆえに。 「……澪ちゃんさあ」  思わず呆れてしまったのだ。クラスの友人である黒須澪(くろすみお)が、いかにも胡散臭いアプリを勧めて来たがゆえに。 「いくら私でも、そんなオカルト信じないよ……。あり得ないって、お天気を変えられるアプリなんて」 「ちょっと!梨央子(りおこ)ちゃん酷いです!私が梨央子ちゃんを騙すメリットなんかあります!?」 「やー、ないとは思うけどさあ」  昼休みの時間。教室でぷくーっと頬を膨らませていると、お嬢様然とした澪も普通の小学生に見えるから不思議だ。  成績優秀、運動神経抜群、しかもお金持ちの家のお嬢様。天から二物も三物も与えられたとびっきりの美少女、それが澪だった。はっきり言って、平々凡々のドジっ子小学生でしかない私とはまったく釣り合っていない。  これでよくある悪役令嬢よろしく“おほほほほ!下民はみんなわたくしの下僕!みんなわたくしに従いなさーい!”みたいなキャラなら憎むこともできようが、実際はキャラものグッズが好きで怪談が好きな普通の女の子である。一切気取らないし、話していても楽しい。神様はまったく不公平である。その才能の一割くらい、凡人に回してくれてもバチは当たらないだろうに。  で、そんな彼女に今、胡散臭いどころでなく胡散臭い者を勧められているわけだが。 「最近みんなの間で流行してるんですよ……といっても、まだ流行ってるの、隣の学校が中心みたいですけど」  彼女はスマホに指を滑らせながら言う。 「ほら、N小学校の運動会は先週だったでしょ?」 「あー、そうみたいね?さっちゃん家の前がすっごい煩かったみたいだし」
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