夕立らんでぶー

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夕立らんでぶー

 夕立が好きな人なんかいない。きっと、貴方に尋ねたらそう言うでしょう。  突然雨に降られて、真っ暗になった空を見て、ほら今日もしかめっ面。 「夕立なんて聞いてねえよおー!」  嘆きながら頭を抱える。 「めっちゃ雨降るって知ってたら、大きい傘持ってきたのに!天気予報の嘘吐き!」  突然の雨。貴方はぶつくさ言いながら、バッグに手を突っ込むの。  そう。  だから私は、夕立が好き。私の声なんて、貴方には聞こえていないでしょうけど。  朝から雨が降っていたら、貴方は大きな傘を会社に持っていく。  突然の夕立の時だけ、鞄に入れっぱなしの折り畳み傘の“私”を使ってくれるの。  だから私は、夕立が好き。  貴方と二人っきりで歩ける、この季節の雨が好き。  ねえ、私は体は小さいけど、めいっぱい貴方を雨から守るわ。だから。 「夕立なんか嫌いだー!」  だからちょっとだけでも、機嫌を直してちょうだいね?
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