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高校3年生の5月下旬。先生たちは受験受験とうるさくなってきて、みんな少しずつ未来を意識し始める。けれど私が意識している「未来」は少し違う。大学じゃない。「彼氏」だ。
周りのみんなは彼氏がいたり、今はいなくてもそれなりに長く付き合った彼氏がいる。私は一度中2の時に告白されて付き合ったけど、3週間くらいで別れてしまった。女子校でもないのにそれっきり男っ気がない。男友達すらいない。勉強の息抜きに彼氏とデートする友達や元彼の愚痴を話す友達の隣に居続けた結果、進学先よりもそっちの方が気がかりになっていた。
「しっかしみらん、なんでそんなに顔悪くないのにモテないんだろうね?気が強そうだから?」
「そうかもなぁ…。」
「実際特別強気なわけでもないのにね。見た目だけなのに。でも高校生なんてなんとなくの付き合いが多いだろうから、見た目気強そうだったらアウトオブ眼中なのかもね。」
「達観してるな〜。純香の彼氏はなんとなくじゃないの?」
「私のカレは一途だから♡高校でて大学生活落ち着いたら結婚するんだ〜」
「あー…イイネ…」
昼休みが終わった。
帰り道、なんとなく見かけたカフェに1人立ち寄り一応受験勉強らしきものに手をかけてみるが、やはり今後の彼氏事情が気になり頭に入らない。いつのまにか教科書を開いたまま裏返しに置き彼氏のことばかり考えていた。
「(彼氏ってみんなどこで作ってるんだろ?やっぱり部活?私は卓球部…男子みんな地味なんだよな〜卓球部男子の別名ジミーズだし…)」
なんとなく取り出したスマホで落としやすい男子の特徴について検索してみた。
「(女耐性のない男子か…あんまり女子に相手にされて来なかった男子ね。うーん。ならうちの部活ってちょうど良いのか?うちのジミーズ達って全員彼女いたことないだろうし…恋愛経験も勉強の一貫だと思って誰か1人落としてみる?)」
カフェラテを飲み尽くし店を出た帰り道。目に入る風景は変わったが頭の中は変わっていなかった。
「(落とすとして、マシなのって誰だろう?部長の米村は笑い方きもいからナシ。うちで1番戦績いい高塙も県3位の自慢ばっかでうざいからナシ。…もう理想的な相手は選んでらんないな。残りの男達をナシじゃない奴らとして、1番都合良い奴を狙ってみよう。)」
私は頭の中にメモ帳を思い浮かべ、米村と高塙以外の情報を箇条書きにしていった。
「(この情報をまとめると1番良いのは達川だな。地味だけどコミュ障ってわけではなさそうだし、オタクだったとしてもきっとライトなオタクだと思う。それに一緒に大会敗退してるからお互い慰め合おう的な感じでコロッと落とせそう。よし、イケる!仮にも告白されたことあるんだ。全く魅力ないわけじゃないだろうし‼︎)」
そこから先は記憶に残っていない。意識を失っていたらしい。目を開けると私は病院のベッドに寝ていた。
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