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看護師達が騒がしくてもう一度目を瞑りたくなった。意識がはっきりすると医師がやってきて私に病状を告げた。
「白石 みらんさん。あなたは学校からの帰り道で倒れていたようで、通りすがった人の通報で運ばれてきました。今は自覚がないと思いますが、あなたの病気は軽くはない。」
私は回らない頭で聞く必要がありそうなことを聞いた。治る病気なのか。命に別状はないのか。治ったとして後遺症は残るのか。見た目に変化はないのかなどなど。
「治らない病気ではないです。この病気になった人の多くは元気になって退院されます。後遺症も殆どなく、見た目も別段変わりません。ただ…死亡するケースも稀ではありません。」
その後の医師の説明を聞く限り、私の病気は軽くはないが、あまり進行はしていないみたいで死ぬ可能性は低いようだった。けれども「死ぬかもしれない」という事実は私の心と脳に突き刺さり、元から抱えていたある悩みを増幅させることになった。
「(参ったな…さっきまで彼氏ナシで華のJKが終わることを心配してたのに、彼氏ナシで人生が終わることを心配しなくちゃいけなくなっちゃった…)」
その日は酷く体調が悪くそのまま眠った。次の日に起きると幾分か体調が良くなっていて、冷静に考えることができるくらいになっていた。
「(ふぅむ…流石のジミーズと言えどもしかしたら長くないかもしれない女子となんて付き合わないよな…どうしたものか…本当に彼氏ナシで人生が終わっちゃうかもしれない。こんな死ぬかもしれない病人とでも付き合ってくれる人が見つかればいいんだけど…)」
病床を離れ中庭に出てうろうろしていた。どうやら私は考え事をしている時は歩き回る癖があるらしい。この時初めて知った。
そこからまた少しうろうろしていると少し離れたところから歩いてきた同年代と思われる痩せた男が私の目の前に通りがかり、そして脚の力が抜けたように倒れ込んだ。彼が持っていたスケッチブックと色鉛筆が私の足元に散らばった。
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