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「大丈夫…ですか?」
「あぁ…大丈夫です。ありがとうございます。」
そこから立ち上がるのに苦労している様子だったので、散らばったスケッチブックと色鉛筆を回収して彼に渡してあげた。
「ありがとうございます。病気で身体が弱っていて、よくあるんです。突然力が抜けること。本当に助かりました。拾ってくれてありがとう。」
そういうと彼は館内に向かって歩いて行った。ほんの少し歩き方がぎこちないが、脱力はもうないようで自力で歩いていた。
私は彼を見送った後、再び足元を見ると青色の色鉛筆が1本落ちているのを見つけた。きっとさっき回収し忘れた1本だ。
「あ、あの〜」
拾って彼を呼ぶが、もう聞こえないようだった。すると私の後ろから壮年女性が声をかけた。どうやら彼の母親らしい。
「ありがとう。私から渡しておくね。」
「あ、はい。お願いします。」
「若いわね。高校生くらい?」
「はい。3年生ですね。」
「あの子と一緒ね。」
「そうなんですね。」
他愛のない会話を少し続けた後、壮年女性は少し悲しげでまた少し真剣な顔で私に告げた。
「若い子で入院してる人ってあんまりいないでしょう?あの子、人一倍寂しがり屋なんだけど、同年代のお友達とあまり会えなくなって寂しそうなの。良かったらあなたが仲良くしてあげて。」
「あ、はい。機会があれば…」
「ふふっ。ありがとう。」
壮年女性は彼を追いかけて行った。女性の背中を見ながら私は呟いた。
「病気…同い年…寂しがり…」
「………‼︎」
「あいつだ‼︎」
…続く。
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