epilogue

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epilogue

 寒さに震えている二匹のハリネズミ。  隣を見ると、自分と同じように震えている。  あの子も寒いのだろうか?  もっとくっつくと温かいかもしれない。  向こうもこちらを向いて思案顔だ。  お互いに視線が頷く。  二匹は距離を縮めるために歩み寄る。  できるだけ近くへ、できるだけお互いの温度を感じられるように。  ……っ、  不意に痛みが走る。  彼女も痛みに顔を歪めている。  もっと近づきたい、でも……。  近づきすぎるとお互いの針がお互いを傷つけてしまうということを知った。  やっぱり、一人でいる方が楽なのかもしれない。  気持ちを隠して、フェイクの自分をあたかも本当の自分のように装って。  そうすればもう傷つくこともないから。  寒さに震えるハリネズミ  もう誰も信じられなくて。  誰にも心を許すことができなくて。  内側に閉じこもって、頑なに針で自分を守ってきた。  ある日、誰かがそっと自分に触れてきた。  そっと優しく触れる彼女の手は柔らかくて、温かくて、とても心地が良い。  ハリネズミはその感触に少しこそばゆさを感じながらも、気持ち良さげにその手に身を委ねていた。  ある時、ハリネズミは自分から彼女の手に触れてみたいと思った。  ハリネズミはその柔らかく優しい手にそっとすり寄った。  すると、彼女は痛みに悲鳴をあげ、涙で顔が滲んでいった。  自分はもう彼女の手に触れてはいけない。  ハリネズミはその手に触れることを諦めて、再び針の中に顔を埋めた。
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