a face under the fake

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a face under the fake

 雨の日は嫌い。  いろんな要因が気持ちをブルーにする。  変にクセのある私の髪は今日みたいに雨降りで湿気が多い日だと私に反旗を翻す。  肩につくかつかないかの長さをキープしているのはこれ以上長いと邪魔になるし、これ以上短いと雨・晴れに関わらず膨らんでしまってどうしようもなくなってしまうからだ。だから今日は後ろで一つに束ねた。  そしてこんな日は偏頭痛がひどい。  その鈍く脈を打ち続ける痛みに次第に戦意が奪われていく。  戦いの時は刻一刻と近づいているというのに。  改札を出て会社のビルの地下に入っているコーヒーショップに入る。雨の日は駅直結のビルの中にオフィスがあって本当に良かったって思う。  カフェインが頭痛に良くないのは分かっている。分かってはいるのだけれど、特にこんな日は少しでも気持ちを高めるものが必要なのだ。  自動ドアが開くとすぐに挽きたてのコーヒーの香りが漂ってくる。これだけでもすでに心が慰められているのを感じる。  一番大きいサイズより一つ下のサイズにしてカフェラテを注文した。マフィンも一緒に買えば良かったかなと少しだけショーケースの中に心残りを感じながら、奥にある受け取りカウンターでまだ熱々のペーパーカップを受け取って店を出た。  エスカレーターに乗りながらこっそりと、蓋の飲み口に差し込まれたマドラースティックを抜いて一口すする。  エスプレッソがフォームミルクの泡を追いかけるようにして舌の上を滑っていく。  一日で一番幸せを感じる one sip(ひとくち)
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